Siナノ粒子で太陽電池の変換効率が改善:Si系太陽電池表面に塗布するだけ
物質・材料研究機構(NIMS)のMrinal Dutta博士らによる研究グループは、直径が最大5nmのシリコンナノ粒子を用いて、シリコン系太陽電池のエネルギー変換効率を向上させる方法を開発した。これまで10%程度であった太陽電池のエネルギー変換効率を、最大12.9%に高めることができた。
10%程度が12.9%に
物質・材料研究機構(NIMS) 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の研究委員であるMrinal Dutta博士、及びグループリーダーを務める深田直樹氏を中心とする研究グループは2015年7月、直径が最大5nmのシリコンナノ粒子を用いて、シリコン系太陽電池のエネルギー変換効率を向上させる方法を開発したことを発表した。今回の実験では、これまで10%程度であった太陽電池のエネルギー変換効率を最大12.9%に高めることができたという。
太陽電池は、主にシリコン系材料が用いられているが、さらなるコスト削減と変換効率の向上に向けて、さまざまなアプローチが行われている。Dutta氏らの研究グループでは、シリコンナノワイヤ内部に、pn接合を有するナノワイヤ型太陽電池の研究を行っている。
特殊な材料や構造の必要なし
今回の研究では、特殊な材料や構造を用いることなく、アルコール系の溶液中に分散している、表面が分子終端された最大粒径が5nmのシリコンナノ粒子をシリコン太陽電池表面に塗布するだけで、容易にシリコン系太陽電池のエネルギー変換効率を高められる方法を開発した。
一般的なSi系太陽電池にも応用可能
今回は、n型シリコンナノワイヤをp型シリコンマトリクスに埋め込んだナノワイヤ型太陽電池を用いて実験を行った。シリコンナノ結晶については、シリコン系の酸化物粒子であるシルセスキオキサンを酸化還元した。その後に、表面を1-オクタデセンで分子終端することで、アルコールに分散した形態で作製した。特に、シリコンナノ粒子表面を1-オクタデセンを用いた安定なC-H結合で終端したことにより、シリコンナノ粒子からシリコン太陽電池材料へのエネルギー移動を可能とした。加えて、ナノワイヤ構造との複合化により、効率の高いシリコン系太陽電池を実現することができたという。
n型シリコンナノワイヤの走査型顕微鏡写真(左)、p型シリコンマトリクスの走査型顕微鏡写真(中央)、1-オクタデセンで終端されたシリコンナノ粒子の透過電子顕微鏡写真(右) (クリックで拡大) 出典:物質・材料研究機構
今回の実験で用いた方法は、シリコンナノワイヤ型太陽電池の他、一般的に使われているシリコン系太陽電池にも応用することが可能で、変換効率を容易に改善できる有用な方法の1つとみられている。
研究グループでは今後、シリコンナノ結晶のサイズや表面を終端する分子種の最適化を行い、エネルギー変換効率のさらなる向上を目指す予定だ。なお、今回の研究成果は、2015年7月18日にACS NANO誌オンライン版へ掲載された。
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