エクサ級スパコンの実現でカギを握るGPU技術:科学計算分野で復権を目指す米国がNSCIを立ち上げ
米国は、「エクサ級スーパーコンピュータ」の開発で一番乗りを果たすため、国家プロジェクトを立ち上げる。このプロジェクトで重要な役割を担うとみられているのがGPU技術である
米国は「エクサ級スーパーコンピュータ」の構築に乗り出す。現行の最速コンピュータに比べ30倍の演算性能を備えたマシンである。開発の一番乗りを果たすことで科学計算分野における米国の復権を目指す。NVIDIAは最新のGPU技術とインターコネクト技術を提案する。
エクサ級スーパーコンピュータとは、1秒間に100京回の計算を実行できる1エクサフロップスの演算処理能力を備えたコンピュータである。これが実現できると人間の脳や心の働きを解析することができるとみられ、精密医療などへの応用が期待されている。
米国は、エクサ級スーパーコンピュータの構築に向け、2015年7月末にオバマ大統領が、スーパーコンピュータの研究開発を推進するための大統領令に署名した。これに基づき、「NSCI(National Strategic Computing Initiative:国家戦略コンピューティングイニシアチブ)」を立ち上げる。米国エネルギー省、国防総省、アメリカ国立科学財団がすでに取り組んでいる国家プロジェクトの延長線にある構想だ。
エクサ級スーパーコンピュータを実現するためには、従来のCPUを用いると消費電力が2GWに達するとみられている。これに対して、GPUを活用すると同様の消費電力で、ほぼ10倍の演算性能が得られるという。こうしたこともあり米国エネルギー省は2014年11月に、GPUを活用したスーパーコンピュータの開発計画を発表している。
マシンの演算性能を高めるためには、コンピューティングコア単体の性能向上に加え、バスアーキテクチャなども大きく影響してくる。NVIDIAは、システム性能を格段に高めることができる「NVLinkインターコネクト」技術を開発している。NVLink技術を活用すると、スーパーコンピュータ内のCPUとGPU間のデータ交換速度を、従来に比べて5〜12倍に高速化できるという。
実際にNVLink技術は、オークリッジ国立研究所の「Summitシステム」や、ローレンス・リバモア国立研究所の「Sierraシステム」に導入される予定だ。Summitシステムは150ペタフロップスの処理能力をターゲットにしており、プレエクサ級システムと呼ばれている。
NCSIは、プログラム開発の生産性や移植性も重視しているという。NVIDIAが発表したOpenACCのツールキットを利用すると、x86CPUやGPUを用いる場合に、並列プロセッサのプログラミングを極めてシンプルに行うことができるという。
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