東工大、ゲルマニウム導入で光るダイヤを開発:バイオマーカーや量子暗号通信への応用に期待
東京工業大学の岩崎孝之助教らによる研究グループは、ダイヤモンド中の空孔(V)、とゲルマニウム(Ge)から成る新しいカラーセンターの形成に世界で初めて成功した。生細胞イメージング用のバイオマーカーや量子暗号通信への応用が期待されている。
東京工業大学 大学院理工学研究科の岩崎孝之助教と波多野睦子教授らの研究グループは2015年8月、ダイヤモンド中の空孔(V)、とゲルマニウム(Ge)から成る新しいカラーセンターの形成に世界で初めて成功したことを発表した。研究成果はバイオマーカーや量子暗号通信への応用が期待されている。
研究グループは、ダイヤモンド中にゲルマニウムを導入することで、ゲルマニウムと格子欠陥(空孔)が結び付き、GeVセンターを形成させることに成功した。このGeVセンターは、外部からの光励起によって、波長602nmで強く発光することが分かった。しかも高い再現性で形成できることを確認した。また、カラーセンターが多く含まれているアンサンブル状態だけでなく、ゲルマニウム原子1個と空孔の組み合わせから成る単一カラーセンターも安定して形成し、機能させることができることも確認している。
今回の研究で得られた2次自己相関関数測定から、単一GeVセンターが単一光子源として機能することを証明すると同時に、飽和発光強度として170kcpsという高い数値を得ることができた。励起波長を最適化すれば、GeVセンターの発光強度をさらに上昇させることもできるという。再現性良く形成できるダイヤモンド中のカラーセンターのうちで、最も高い輝度が得られる構造となる可能性がある。ゲルマニウム原子は炭素原子が存在する格子位置ではなく、格子と格子の間に存在していることを、研究グループは第一原理計算により明らかにした。
イオン注入法を用いた場合は、ダイヤモンド自体にダメージを与えることとなり、GeVセンターの発光波長にばらつきが生じることが、研究により分かった。一方、マイクロ波プラズマ化学堆積法を用いることで、発光波長が均一なアンサンブルGeVセンターを作成することができたという。Si(シリコン)Vセンターに比べて、GeVセンターは制御が容易で、拡張性に優れた発光源として利用できる可能性を示した。
今回の研究成果は、生細胞イメージング用のバイオマーカーや量子暗号通信への応用が期待される。さらに高感度センサーとして活用できる可能性も高いとみられている。なお研究成果は、大阪大学、産業技術総合研究所、滋賀医科大学、ドイツのウルム大学との共著論文として、英国ネイチャー出版グループのオンラインジャーナル「Scientific Reports」に、2015年8月7日付で公開された。
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