光通信デバイスに「透磁率」の概念導入、光変調器を1/100程度に小型化可能:新技術
東京工業大学(東工大)、理化学研究所、岡山大学の研究グループは、光通信デバイスの開発において、これまでの「誘電率」制御に加えて、「透磁率」制御の概念を導入することに成功した。これまでより極めて小さく、高性能なデバイスを実現することが可能となる。
東京工業大学(東工大)、理化学研究所、岡山大学の研究グループは2015年3月、光通信デバイスの開発において、これまでの「誘電率」制御に加えて、「透磁率」制御の概念を導入することに成功したと発表した。これら2つのパラメータを同時に制御することで、これまでより極めて小さく、高性能なデバイスを実現することが可能となる。
今回の開発は、東京工業大学(東工大)量子ナノエレクトロニクス研究センターの雨宮智宏助教と荒井滋久教授、理化学研究所の田中拓男准主任研究員、岡山大学自然科学研究科の石川篤助教らの共同研究グループが行った。
InP系マッハツェンダー光変換器
光通信で用いられる電磁波(光)にとって、誘電率と透磁率の概念は物質を特徴付ける重要なパラメータとなる。しかし、光通信で用いられる高周波の光では、「全ての物質の比透磁率は1である」という事実から、これまで透磁率を制御して特性を改善しようという取組みはほとんどなかったという。
こうした中で共同研究グループは、レーザーや変調器、光スイッチなどを製造する際のベースとなるInP(インジウムリン)系プラットフォームに、透磁率の概念を導入した。具体的には、InP系マッハツェンダー光変換器をベースとして、デバイス内部に特殊なメタマテリアルを実装。電圧印加による透磁率の変化を利用して、透過光の強度を変調することに成功し、デバイスのさらなる小型化の可能性を示した。
共同研究グループは、今回の開発での主な成果として「トライゲートメタマテリアル」と「メタマテリアル集積型マッハツェンダー光変換器」の2つを挙げた。InP系化合物半導体上に浅い溝を掘り、その内部にナノスケールの金属構造を作り込むことで、電圧制御が可能なトライゲートメタマテリアルを開発した。上部から電圧を印加することで半導体内のキャリア密度が変化し、金属微細構造の応答に変化が生じるという。これによって透磁率の値を制御することが可能となった。
誘電率と透磁率の両方を制御すれば、さらなる性能改善も
開発したトライゲートメタマテリアル技術を光通信デバイスに実装することで、透磁率制御によるメタマテリアル集積型マッハツェンダー光変換器を実現した。素子の上部から電圧を印加し、アーム部の透磁率を変化させて強度変調を行うことになる。透磁率を制御することで、200μmのデバイス長において、約7.0dBの変調特性が得られたという。誘電率と透磁率の両方を制御すれば、さらなる性能改善が可能になるとみている。このため、将来は現行製品と同じ特性であれば、形状を1/100程度に小型化できると予想する。
今回の研究成果は、英国科学誌「Nature(ネイチャー)」の姉妹誌であるオンラインジャーナル「Scientific Reports」に、2015年3月23日より掲載されている。
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