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がん組織に埋め込むセンサー、無線でデータ送信:充電も非接触(2/2 ページ)
米国のがん研究機関が、がん組織に直接埋め込み、バイオマーカーのデータを無線でリアルタイムに送信するセンサーを開発した。今後、開発チームは、センサーの改良を重ね、MRI(核磁気共鳴画像法)装置を使わなくても同等の検査ができるようにすることを目指すという。
MRI装置を使わない検査を
センサーには10mlのMRI造影剤も含まれている。開発チームは4年前に、MRI装置で読み取れる生体埋め込み型センサーを開発している。Koch Instituteの研究者で、MITの材料科学学科で教授を務めるMichael Cima氏は、ニュースリリースの中で、「MRIの検査は費用がかかり、日常的に行うのは難しい。今回開発したセンサーによって、MRI装置を使わなくても同等の検査ができるようにしたい」と述べている。
ワイヤレス給電が可能
センサーとリーダー端末の両方にコイルが搭載されていて、磁気共鳴方式のワイヤレス給電によって、センサーを充電することができるという。
Cima氏ら開発チームは、マウスを使った実験に既に成功している。マウスにセンサーを埋め込んでまだ数週間しかたっていないが、Cima氏は、このセンサーを使って何年間も患者の状態をモニタリングできると確信しているという。「現在、心臓のペースメーカーや除細動器など、体内に医療機器を埋め込んでいながらも元気に生活している患者が何千人もいる。今回われわれが開発したセンサーは生体適合性のある物質を使っているし、小型であることから、長期間にわたり体内で使用しても問題はないと考えている」(同氏)。
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