IntelのAltera買収、その行方は?(後編):M&Aでは“黒歴史”も持つIntel(2/2 ページ)
IntelのAltera買収の狙いは、通信分野にもあるとみられている。これまで、買収した企業の価値を生かし切れずに売却せざるを得ない状況になったこともあるIntelだが、Altera買収は「プラスに受け止めている」と話すアナリストもいる。
価値を生かし切れずに売却された「StrongARM」
匿名を条件に取材に応じたある業界アナリストは、Intelが買収した企業を統合するプロセスを“Intel-ized(Intel化させる)”と表現した上で、買収した企業をうまく取り込むのではなく、結局は崩壊させてしまうというIntelによくあるパターンについて説明した。
その典型的な事例が、1997年のDigital Equipment Corp(DEC)の半導体部門買収だ。Brookwood氏は、「この買収は、CPU関連の特許侵害があったとしてDECがIntelを訴えた後に実施された。DECはStrongARMプロセッサをIntelに譲渡したが、最終的にはPCIスイッチ部門と併せてMarvell Semiconductorに売却された」と説明している。
買収の動機が何であれ、IntelがDECとの取引で獲得した価値を全く理解していなかったことは明らかだ。
Envisioneering GroupのPeter Glaskowsky氏は、「DECの半導体部門買収は全くの無駄だった。当時は、これからモバイル市場が急速に成長していくという時期だった。こうした中、Intelは高性能のARMコアを手に入れたのである。だが、モバイル市場が全盛期に向かうと同時に、IntelはARMテクノロジーの価値を全く生かすことなく、結局は手放すことになった」と述べている。
Envisioneering GroupのDoherty氏は、「IntelはStrongARMの価値を生かし切れなかった。なぜかは誰にも分からないが、1つ言えるのは、Intelのモバイルアーキテクチャはかつてのようにx86系だけになり、当面はその体制が続くだろうということだ」と語った。
IntelはPC以外の事業を拡大することの重要性を示しつつも、実態は伴っていない。過去20年間のIntelのプレスリリースを読むと、同社は通信/ネットワークチップ企業を買収するたびに、PC以外の事業への取り組みを明確に掲げている。
Altera買収は“プラス”になるのでは
IntelのAltera買収に話を戻そう。
Moore Insights & StrategyのMoorehead氏は、IntelとAlteraの合併の成功を確信しているという。同氏は、「Intelは、Wind River Systemsの買収において、ARMプロセッサとx86プロセッサへの需要のバランスを取ることにおいて、見事な采配を見せた。Alteraに関しても同様の成果を挙げてくれるものと期待している」と述べている。
Moorehead氏は、IntelのCEOであるBrian Krzanich氏が買収後もARMベースのソリューションに投資し続けると公言していたことに触れて、「IntelはFPGA単体の事業を継続すると同時に、FPGAをIntelのチップに、オンダイ(On-die)あるいはオンパッケージ(On-package)で統合する方向も検討していく意思を表明している」と語った。Moorehead氏は「今回の買収をマイナスではなくプラスに受け止めている」と語った。
【翻訳:青山麻由子、滝本麻貴、編集:EE Times Japan】
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