Googleら7社が動画フォーマットの開発で団結:HEVCに先制攻撃?(3/3 ページ)
GoogleやIntel、Microsoftなど7社が、次世代動画フォーマットの開発を目指すべく、「Alliance for Open Media」を設立した。MPEG LAが規格化しているHEVCに真っ向から勝負を仕掛けることになるのだろうか。
HEVC関連の特許侵害は?
IHSのコネクテッドホーム部門で主席アナリストを務めるMerrick Kingston氏はEE Timesに、Alliance for Open MediaはGoogleの戦略をお手本にしていると語った。同氏は、「Googleはコーデック技術『VP9』を、オープンでロイヤルティーフリーと位置付けているが、Alliance for Open Mediaが目指す方向もこれとほぼ同じだ」と述べている。
市場には既にGoogleが開発したVPxシリーズのコーデック技術があるとも言えるわけだが、これについてはどうなのだろうか。Kingston氏によると、ほとんどのベンダーやサービスプロバイダは、ビデオコーデック技術に関する長期的な戦略を、Google1社だけの手に委ねることには難色を示しているという。「Alliance for Open Mediaは、VPxのように、経済面での魅力があるだけでなく、より透明性のある技術連携をビデオコーデック規格も、市場にもたらしたいと望んでいる」(同氏)。
こうした目標は称賛に値する。だが一部のアナリストは、Alliance for Open MediaがMPEGが標準化した既存技術に関する特許を侵害することなく、新しいビデオコーデック技術を開発する準備が整っているのかどうかに疑問を呈している。
Envisioneering GroupのリサーチディレクタであるRichard Doherty氏は、Alliance for Open Mediaの創設は(業界にとって)大きな出来事だとしながらも、「H.265関連の特許を侵害しないように技術開発を進めるのは、不可能とは言わないまでも、かなり難しいのではないか」と推測している。
スムーズは成功例は、ない
さらに、ロイヤルティーフリーのビデオコーデック技術には、「過去に一度もスムーズに成功したことがない」という厳しい現実も待ち構えている。匿名を希望するあるアナリストは、「かつてMicrosoftはWMV9というビデオコーデック技術を開発し、SMPTE(米国映画テレビジョン技術協会)の規格という形で、世に出したことがあった。これもロイヤルティーフリーを約束していたが、結局Microsoftは、MPEG LAとパテントプールを形成せざるを得ない状況になってしまった。いくつかの技術が、H.264/MPEG-4 AVCの特許を侵害するとみなされたからである」と説明している。「同じことはGoogleのVP8でも起きた。Googleは、VP8をロイヤルティーフリーで提供する際に、法律的には何の問題もない事を示すべく、AVCの特許関連でMPEG LAと何らかの契約を結んだとされている」(同氏)。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 衣服をこすってスマホを操作? Googleのスマートファブリックプロジェクトが始動
スマートファブリック(布地)の開発を目指すGoogleのプロジェクト「Project Jacquard」が始動した。米国ジーンズメーカーのリーバイスと協業することが決まっている。指でこするとモバイル機器を制御できるようなジーンズが作られるかもしれない。 - H.264の後続規格「HEVC」は、インターネットビデオ市場に変革を起こせるか?
2013年1月、高効率の映像圧縮方式であるHEVC(High Efficiency Video Coding)の規格がITUに承認された。このHEVCが普及するか否かは、AmazonやApple、Googleらが、同技術の“支援者”になってくれるかどうかにかかっている。 - 災害発生の決定的瞬間の映像を自動伝送する技術
エクスプローラは、情報カメラで収録した映像を、災害発生時に自動伝送することができる「H.264 HD対応IP蓄積伝送装置」を、NHKと共同で開発した。災害などの発生時刻をトリガーとして必要な部分の映像のみが伝送されるため、瞬時に活用することができる。 - “あえて低解像度”の映像で人の流れを認識、プライバシー保護で
富士通研究所は、監視カメラで撮影した低解像度の映像から、人の流れを認識することができる技術を開発した。この技術を活用することで、個人のプライバシーを侵害せずに、街中や施設内などにおいて、避難誘導や混雑解消などを容易に行うことが可能となる。