Apple「A10」の製造は、TSMCとSamsungに分散?:TSMCの“独壇場”ではなさそうだ(3/3 ページ)
複数のアナリストによると、Appleが14/16nmプロセス適用チップの調達先を分散する可能性があるという。Appleの次世代プロセッサ「A10(仮称)」の製造委託先は、TSMCとSamsung Electronicsに分散される可能性が高く、少なくともTSMCが独占的に製造するということは、なさそうだ。
14nm FinFETレースで好スタートを切ったSamsung
Lau氏によると、ファウンダリ各社は、2015年の初期生産から2カ月で、14/16nmのウエハー価格の引き下げを2度行ったという。この恩恵を最も受けるのがAppleだ。同社は、A9プロセッサの発注先として、Samsung、GLOBALFOUNDRIES、TSMCの3社を検討してきたとされている。
Lau氏は、「Appleが複数のファウンドリに発注するのは、これが初めてのことだ。TSMCは、Appleが最近提示した希望価格に同意しなければ、16nmの生産を減速させなければならない恐れもある。TSMCの2016年第1四半期の売上高は、再びマイナスに傾く可能性もある」と指摘している。
Credit SuisseのAbrams氏は、「コンセンサス予想では、ファブレス企業上位10社は概して、2015年の年間売上高が減少に転じると予想される。2008年の金融危機以来、初めてのことだ」と述べている。ただし同氏は、2016年にはファウンドリの在庫が一掃され、回復に向かうと予想している。
Lau氏は、「TSMCは、2015年に入ってから数回、16nmの生産計画を修正している。当初は1カ月当たりウエハー8万枚を生産する計画だったが、最近、5万枚/月とより現実的な数字に変更した。その主な要因は、QualcommやAppleといった同社の大口顧客からの受注が、ライバル企業のSamsungに奪われたことにある。TSMCは、2015年と2016年の増資計画についても修正を余儀なくされると予想される」と述べている。
ただし、BernsteinのLi氏によると、「14/16nmプロセスは20nmよりも堅調で、2015年のファウンドリ売上高は25億米ドルに上る見通しだ。さらに2016年は、8〜10億米ドルの増加が予想される」という。
Lau氏によると、「14nm FinFETレースで好スタートを切ったSamsungは、より多くの顧客や製品に向けてシェアやサービスを拡大している」という。同社は、2015年の主力製品「14LPE(Low-Power Early)」と「14LPP(Low-Power Plus)」に加え、2016年には3種類の派生品「14LPC(Low-Power Compact)」「14LPA(Low-Power Advanced)」「14LPH(Low-Power High-Performance)」を発表する計画だという。
Samsungは、同社のプロセッサ「Exynos 7420」に14LPEを搭載している。Exynos 7420は、Samusungの「Galaxy S6」や「Galaxy Note5」などのハイエンドスマートフォンに搭載されている。14LPPは、Appleの次期プロセッサA9やQualcommの次世代ハイエンドアプリケーションプロセッサ「Snapdragon 820」に採用されている。
【翻訳:滝本麻貴、田中留美、編集:EE Times Japan】
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