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部分痩せは可能なのか? (後編)世界を「数字」で回してみよう(20) ダイエット(3/9 ページ)

後編では、「部分痩せ」について、かなり突っ込んだ検証をしてみたいと思います。そもそも、体のある特定の部位だけ、『脂肪の増加方向と減少方向に異なる加速度が生じる』ことがあり得るのでしょうか。今回はこれについて、数字を回しまくってみました。

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肥満・減量のメカニズムは、それほど単純ではない

 これに対しては、「一定の『部分』を動かし続けることによって筋肉ができる→その筋肉の熱で、その部分の脂肪だけを燃やす or 溶かすことができる」という考え方もあるようです。

 しかし、肥満のメカニズムと同様に、減量のメカニズムも、そんな単純な仕組みではないのです。

(Step.1)活動エネルギーが足りなくなると、脂肪を分解する酵素が分泌され、血液を介して「全身にバラまかれます」。

(Step.2)この酵素は、「全身の(皮下)脂肪」を分解して、再び血液を(ガソリンみたいな)液体エネルギーに変えて「全身にバラまかれます*)

(Step.3)全身にバラまかれたエネルギーは、全身の活動エネルギーとなって消費されます。

*)もう少し詳細に書くと、(1)活動エネルギー減少→(2)アドレナリン等のホルモン分泌→(3)脂肪分解酵素(リパーゼ)生成され血液で拡散→(4)全身の脂肪が分解されてグリセロールと遊離脂肪酸となって血液に放出→(5)筋肉細胞に届く→(6)ミトコンドリアに取り込まれる→(7)エネルギーをして消費される、となります。

 つまり、筋肉の熱で、脂肪を燃やしているわけではないのです。

 これを、直感的に理解していただくために、熱したフライパンの上にバターの塊を乗せた状態をイメージしてください。このバターは、当然溶けて液状になりますが、フライパンの上から消えて無くなるわけではありません。バターは熱では分解しないので、消し去るには「酸化(炭)」または「蒸発」させるしかありません。

 少なくとも、熱したフライパン以上の温度が必要になることは明らかです。

 もし、筋肉の熱で、その部分の脂肪を消失させることができるのであれば、「部分ダイエット」の開始時と同時に、その部分は爆発的に燃え上がり、瞬時に灰になっているはずなのです。

(なお、「部分痩せ」を成立させ得る、筋の通ったご説明を頂ければ、私は3秒とかからず自分の意見を変えられますので、ぜひご連絡ください。)

人の脂肪は“部分増し”するのか?

 では、今回の最後のテーゼ

“「順番痩せ」―― 「ダイエットやリバウンド時に、自然現象として、バスト、ウエスト、ヒップの痩せ方、または太り方に順番が存在すること」―― は、本当にあるのか?”

の検討に入らせていただきます。

 前述の「部分痩せのコントロールはできない」の仮説に因れば、「順番もない」という考え方が当然です。体の脂肪は、体全体で増加または減少していくはずです。

 ぶっちゃけた話、体は、脂肪と筋肉と骨で構成されています。ダイエットによって影響を受けるのは、脂肪だけ、と考えて良いです(筋肉も減りますが、比率としては小さいですし、骨は無視して良いでしょう)。

 当初、バスト、ウエスト、ヒップのぜい肉……ではなくて、それぞれの部位の脂肪の重量比率を調べてみようと考えていましたが ―― やっぱりというか、こういうデータって見つかりません。

 バスト、ウエスト、ヒップの部分だけを、ダイコンでも切るように分断して、調べれば可能かもしれませんが、そんな猟奇なことはできませんので、今回も数字だけで迫ってみたいと思います。


 前回、私は、女優、女性タレント、アイドルの重回帰分析を行い、以下の式を出しました。

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体重(kg)
= 0.32×身長(cm)
+ 0.26×バスト(cm)
+ 0.48×ウエスト(cm)
+ 0.22×ヒップ(cm)
− 73.60
平均BMI = 17.6

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 さらに今回は、平均年齢20歳の一般女性の分析も実施しました。

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体重(推測値)(kg)
= 0.35×身長(cm)
+ 0.38×バスト(cm)
+ 0.24×ウエスト(cm)
+ 0.62×ヒップ(cm)
− 106.03
平均BMI = 21.2

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 上記の2つの式は、明かに傾向が違います。はっきり言って、別人です。

 バスト、ウエスト、ヒップの係数(これを「説明変数の係数」といいます)の値が、まったく真逆の傾向になっていることや、切片値(身長、バスト等では説明できない要因)の差が、体重の32.4kg分(106.03−73.60)にも相当していることなどです。

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