NIMSとJEOL、計測技術研究センター設立で合意:最新のNMR装置開発で革新的材料研究を加速
物質・材料研究機構(NIMS)と日本電子(JEOL)は、「NIMS-JEOL計測技術研究センター」設立に関する覚書に調印した。両者は一段と連携を強化して、先端の核磁気共鳴(NMR)分析装置を開発するとともに、高度な材料分析技術の研究に取り組む。
物質・材料研究機構(NIMS)と日本電子(JEOL)は2015年10月、「NIMS-JEOL計測技術研究センター」設立に関する覚書に調印した。両者は一段と連携を強化して、先端の核磁気共鳴(NMR)装置を開発し、さらなる高度な材料分析技術の研究に取り組む方針である。
NIMSとJEOLを中心とする研究チームはこれまで、磁場が1020MHz(24テスラ)という世界最高レベルのNMR用超伝導磁石を開発してきた。原子核が持つ磁気的エネルギーは、磁場の強さに比例して大きくなるため、物質の分子構造、原子の結合状態や運動状態などを調べるために、磁場が強力なほど分析しやすくなる。
しかし、「現状のNMR装置では、感度と分解能がまだ十分の性能とは言えない。これらの性能がさらに向上すれば、無機物を含む各種材料などを詳細に分析できるようになる」との判断から、高度な材料分析技術の研究を加速していくため、センターを開設し連携を強化していくことにした。
NIMS-JEOL計測技術研究センターでは、NIMSが得意とする分野の1つである、無機を含む材料分野への応用に特化したNMR装置の開発を行っていく方針を固めた。将来的には同センターでの研究成果をNIMSが先行して導入する。そこでNIMS内外の利用者から収集した開発装置に対する要望や意見などを研究部門にフィードバックしながら、装置の早期実用化や性能のさらなる改善を目指していく方針である。
なお、両者で共同開発した材料評価用の計測・分析機器は、同センターに設置し、多くの材料研究者が活用できるようにしていく。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 長波長の太陽光を利用できる材料の製造法を開発
物質・材料研究機構(NIMS)の韓礼元ユニット長らの研究グループは、長波長の太陽光を利用できる高品質なペロブスカイト材料を作製する方法を開発した。ペロブスカイト太陽電池の効率を高める技術として注目される。 - アナターゼ表面の原子や欠陥を特定、太陽電池のエネルギー変換効率向上へ
物質・材料研究機構(NIMS)を中心とする研究チームは、アナターゼ型酸化チタン(以下、アナターゼ)の表面を原子レベルで可視化して、原子や欠陥の種類を特定することに成功した。今回の成果は、光触媒や太陽電池などに用いるエネルギー材料の変換効率をさらに向上させることができる技術として期待されている。 - 光が表面を散乱せずに伝わるフォトニック結晶を発見、シリコンで実現可能
物質・材料研究機構(NIMS)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点(MANA)の古月暁主任研究員らは、フォトニック結晶において光が表面のみを散乱せずに伝わる新しい原理を解明した。このフォトニクス結晶は、シリコンのみで実現することが可能であり、既存の半導体技術との融合により、新機能デバイスの開発につながる可能性を示した。 - 車のヘッドライトやプロジェクタのレーザー光源を小型化、低価格化する単結晶蛍光体
物質・材料研究機構(NIMS)とタムラ製作所、光波は2015年4月13日、超高輝度、高出力白色光源に適したYAG単結晶蛍光体を開発したと発表した。温度特性に優れた蛍光体で、ヘッドライトやプロジェクタなどのレーザー光源を小型化、低価格化することが期待される。