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有機材料が“ムーアの法則”を延命する:ドレスデン工科大が取り組み加速(2/2 ページ)
ドイツのドレスデン工科大学が、有機材料を用いたデバイスの開発を加速させている。同大学の教授は、「ムーアの法則が7nmプロセスに達する頃には、有機半導体が、情報時代の原油になるだろう」と近い将来、有機材料によるデバイスが主流になるとみている。
計算生物学の考えで、あらゆる処理が実行可能に?
Castrillon氏は、EE Timesの独占インタビューに応じ、「現在、あらゆる種類の一般的なソフトウェアプロセスを、有機材料に適応させようとしているところだ。並列プログラミングモデルとリアルタイムOSを用いて、HAEC(Highly Adaptive Energy-Efficient Computing )を実現したい」と語っている。
また同氏は、計算生物学のコンセプトを採用することにより、ガラス基板上に有機回路を作製して、既存の半導体のコスト関連の問題を克服することが可能な情報処理の実現を目指している。一般的なソフトウェアプロセスは全て、コンパイラからアプリケーションプログラムに至るまで、有機材料で実行できるようになるという。
同氏は、「並列プログラミングモデルやソフトウェア合成、HDL(ハードウェア記述言語)など、現在使っている全てのツールを構築しながら、エネルギーを最小限に抑えることにより、ラボオンチップ(lab-on-chip)のような新時代のアプリケーションを実現したいと考えている」と述べる。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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