ルネサスが“クルマ”を売る!? その真意とは:「DevCon 2015」で披露(3/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは米国で開催した「DevCon 2015」で、同社のADAS(先進運転支援システム)向けの最新SoCなどを搭載した自動車を披露した。実は、この自動車は、自動運転車などの開発を促進すべく同社が発表した“プラットフォーム”である。
なぜ、Skyline Fleetが生まれたのか
ではなぜ、ルネサスはクルマ1台を丸ごとオープンプラットフォーム化しようと考えたのか。REAのAutomotive Unitでバイスプレジデントを務めるAmrit Vivekanand氏に話を聞いた。
まず同氏は、ADAS/自動運転技術において、高度なセンサーフュージョン技術の必要性がますます高まっていることを指摘した。「現在、ドライバーが目視できない場所をモニタリングするブラインドスポット検知、緊急ブレーキ、リアルタイムの3Dサラウンドビューなど、さまざまなADAS向け技術が実装され始めている。これらで最も問題になるのはセンサーフュージョン技術が必要になることだ」(同氏)。
通常、自動車の開発は5〜6年かかるのが一般的だ。例えば、クルマの周辺環境をモニタリングするシステムを開発する場合、5〜6年後には、開発に用いていたセンサーなどが既に古くなっていることになる。さらにVivekanand氏は、「センサーとそれらを制御するアルゴリズムは通常1対1で作られているため、センサーだけを新しいものに入れ替えることはできない」と指摘した。
そこで、センサーとアルゴリズムを完全に切り離すことを考えた。「そうすれば、アルゴリズム開発者は、センサーがどのようなものであろうと、そこからアウトプットされた“データをいかに処理するか”に注力するだけでよい」(Vivekanand氏)。さらにこれは、優れたアルゴリズム開発メーカーが参入しやすくなるというメリットも生み出す。
Vivekanand氏は、「規模が小さいアルゴリズム開発メーカーにとって最も問題なのは、テストできる環境がないということだ。パワー半導体であれば小さな実験室でも評価試験を行えるかもしれない。だが自動車では、そうはいかない」と述べる。
そこでルネサスは、同社のセンサーフュージョン向けチップなどを全て搭載した自動車1台を用意し、アルゴリズム開発メーカーなどが自分たちの技術を実装して評価できるようにしたのである。「センサーフュージョンは複雑な技術なので、複数のアルゴリズムを組み合わせるケースも多々ある。Skyline Fleetを使えば、アルゴリズム開発メーカー同士が互いの技術を実装し、ベンチマークを出してみるといったことも簡単にできるようになる。多くのアルゴリズム開発メーカーの協業を促進することが重要だと考えている」(同氏)。
Vivekanand氏にインタビューを行ったのはDevCon 2015の3日目(10月14日)だったが、Skyline Fleetに対して既に大きな反響を得ていたという。Vivekanand氏は、「半導体メーカーのルネサスがなぜクルマ1台を提供するのかと、最初は誰もが驚いていた。だが、意図を話せば必ず納得してもらえた」と語った。
現在、REAは主に自動車メーカー、ティア1サプライヤー、サードパーティーとSkyline Fleetの提供について交渉し始めているという。ティア1サプライヤーは、他社のセンサーなどと組み合わせてうまく動作するかなどを試したいようだ。自動車メーカーからは、Skyline Fleetをベースに自動運転車などの開発をしたいという声を聞くという。「ステアリングとブレーキを制御するアクチュエーションを、どうやって追加すればいいのか、と尋ねられることもある。今後、Skyline Fleetにアクチュエーションを組み込んでいく予定だ」(Vivekanand氏)。
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