抵抗変化メモリとGaNデバイス:福田昭のデバイス通信 IEDM 2015プレビュー(4)(3/3 ページ)
今回のプレビューでは、セッション7〜9を紹介する。セッション7では抵抗変化メモリ(ReRAM)の信頼性に関する発表が相次ぐ。セッション8では、3次元集積回路の製造技術がテーマだ。セッション9では、富士通と東京工業大学が試作した、96GHzの周波数で出力が3W/mmと高いInAlGaN/GaN HEMTなどが発表される。
96GHzで3W/mmのGaN HEMTを開発
セッション9(パワーデバイスと化合物半導体デバイス)のテーマは、「先端化合物のRFデバイスとパワーデバイス」である。GaNの高周波デバイスとパワーデバイスの研究成果が主に発表される。
富士通と東京工業大学の共同研究チームは、96GHzと高い周波数で出力が3W/mmと高いInAlGaN/GaN HEMTを試作した(講演番号9.1)。独自構造の二重シリコン窒化(SiN)保護膜によって酸化を防止し、電流コラプスが起きないようにした。TSMCは、CMOSとプロセスの互換性のある高耐圧GaNオンSiデバイスを報告する(講演番号9.5)。エンハンスメント型FETとディプリーション型FETを作製しており、いずれも650Vで動作する。
GaN以外の材料では、二酸化バナジウム(VO2)をサファイア基板上に形成した超高周波スイッチをThe Pennsylvania State Universityが発表する(講演番号9.3)。スイッチのカットオフ周波数は26.5THz(テラヘルツ)と極めて高い。挿入損失は0.5dB、信号分離は35dB以上である(最大50GHzまでの値)。1dB利得圧縮点(P1dB)は12dBm、出力3次インターセプト点(OIP3)は44dBm、ターンオン遅延時間は25ナノ秒。
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