14/16nm世代のSRAMと第3の2Dデバイス材料:福田昭のデバイス通信 IEDM 2015プレビュー(5)(3/3 ページ)
今回のプレビューでは、セッション10〜12の内容を紹介する。セッション11では、ルネサス エレクトロニクスやSamsung ElectronicsがSRAM関連の技術を発表する。セッション12では、第3の2Dデバイス材料として注目を集める黒リン関連の発表に注目したい。
第3の2Dデバイス材料「黒リン」に注目
セッション12(モデリングとシミュレーション)のテーマは、「2Dデバイスと有機半導体デバイスのモデリング」である。なお、ここで「2Dデバイス」とはプレーナ・デバイスのことではなく、原子層レベルの厚みしかもたない、極めて薄いデバイスを指す。原理的にはキャリアの移動度が極めて高いことから、次世代の高速デバイスを狙った研究が活発になっている。
2Dデバイスの材料としては従来からグラフェン(炭素原子の平面構造)と二硫化モリブデン(MoS2)が知られている。これらに続く第3の2Dデバイス材料として急速に注目を集めて始めたのが「黒リン(Black Phosphorus)」だ。黒リンそのものは100年ほど前から知られている。ただし、電子デバイスと光デバイスへの応用可能性が指摘されたのは昨年(2014年)のことである。IEDM 2015では、シミュレーションによって黒リンの電子物性を検討した結果が報告される。
スイスのETH Zurichは、単一層の黒リンによるnチャンネルFETとpチャンネルFETのキャリア移動度をシミュレーションによって検討した結果を報告する(講演番号12.1)。またシンガポールのNational University of Singaporeと米国のNortheastern Universityの共同研究チームは、チャンネル長が7nmと微細な黒リンのFETで電流特性を計算した結果を発表する(講演番号12.2)。
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