インダストリー4.0の課題は人工知能で解決:R-INエンジンと組み合わせて(3/3 ページ)
センサーを利用した装置のモニタリングでは、膨大な量のデータが生成され、既にネットワークをひっ迫している。ルネサス エレクトロニクスは、同社の産業機器向け高速データ処理/通信エンジンである「R-IN」と人工知能を組み合わせ、それをエッジデバイス(工場の装置や機器)に搭載することで、この課題を解決しようとしている。
“見えなかったもの”が、見えるように
R-IN+人工知能という組み合わせにより、ルネサスで第二ソリューション事業本部 産業第一事業部 産業ネットワークソリューション部 エキスパートの高倉敏氏は、「これまでは見えなかった異常が、見えるようになった」と述べる。まず、R-INの高速サンプリングにより、これまでは取りこぼしていた異常値を見つけられるようになった。さらに、人工知能の高度なデータ解析能力により、製造装置のパラメータのバラつきを、より早い段階で検知することが可能になったという。このため、装置のメンテナンスの準備なども早めに行うことが可能になり、予兆保全の精度も上がる。
高倉氏によると、那珂工場の従業員は当初、これまで人の手で行ってきた異常検知を人工知能に委ねることに抵抗を示したという。だが、「実際のデータが出て、異常を指摘すれば、R-INと人工知能を組み合わせてエッジデバイスに搭載することの価値を理解してもらえた」(同氏)。
ルネサスは、R-IN+人工知能というハードウェアから、それをエッジデバイスに実装するサービス、人工知能が異常を検知するための学習、セキュリティ技術などをパッケージ化し、2016年度下期には提供を開始したいとしている。傳田氏は、「エッジデバイスでの高速なデータ処理とデータ通信は、R-INだからできること。当社は、“インダストリー4.0を補完するプラットフォームとして、R-INと人工知能の組み合わせを、エッジデバイス向けに提案していきたい」と語った。
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