生体に埋め込む脳血流量測定システム:福田昭のデバイス通信 IEDM 2015プレビュー(11)(2/2 ページ)
今回はセッション27〜29を紹介する。セッション29では、生体組織分析デバイスや生体モニタリングデバイスに関する講演が行われる。Columbia Universityらの研究グループは、有機材料の発光ダイオードおよび光検出器を組み合わせた、脳血流量モニタリングシステムを発表する。同システムの厚みは、わずか5μmしかない。
酸化亜鉛の高性能多結晶TFT
セッション28(モデリングとシミュレーション)のサブテーマは「コンパクト・モデリング」である。このセッションではフラットパネル・ディスプレイに集積する回路や最先端FinFET、最新のSTT-MRAMに関するモデリングの研究成果が披露される。
University of Sheffieldは、高性能な酸化亜鉛(ZnO)多結晶薄膜トランジスタ(TFT)の開発成果を発表する(講演番号28.1)。ZnOの多結晶TFTは透明で、パネルに電子回路を作りこめる。ただしトランジスタの性能は、一般的なシリコンMOSトランジスタに比べると、はるかに低い。開発したZnOトランジスタは、100℃以下の低温プロセスで作製したことで、62cm2/(V・s)と従来のZnOトランジスタに比べて高いキャリア移動度と、107を超えるオン/オフ比、150mV/decのサブスレッショルド・スイング(SS)を得た。2次元のシミュレーションから得たZnOの状態密度が実験値と良く一致しており、同様のキャリア移動メカニズムが透明な導電性の酸化物に適用できることを実証した。
Samsung SemiconductorとSamsung Electronics、サムスン日本研究所の共同研究チームは、最新のSTT-MRAMを対象としたコンパクト・モデルのフレームワークを構築した(講演番号28.5)。物理ベースのコンパクト・モデルは電荷輸送モデルと磁気ダイナミクスのモデルを包含しており、15nmと微細なSTT-MRAMセルの評価と解析、実験結果との照合などに威力を発揮した。
130万画素のpHイメージ・センサー
セッション29(センサー、MEMSとBioMEMS)のサブテーマは「生体組織分析デバイスと生体モニタリングデバイス」である。
Stanford UniversityとZhejiang Universityの共同研究チームは、チャンネルの寸法がデバイ長よりも大きなチャンネルを備えたナノ流体トランジスタで、イオンに電界が与える影響を調べた結果を発表する(講演番号29.1)。デバイス長が10nm前後、チャンネルの寸法が100nm前後のナノ流体トランジスタで、電流を2.5倍の大きさに変調できた。この値は、チャンネルの寸法が20nmのナノ流体トランジスタよりも良好だとする。
シャープと豊橋技術科学大学の共同研究チームは、空間分解能が3.75μmと高い130万画素のCCD方式pH(ペーハー)イメージセンサーを開発した(講演番号29.3)。pHの分解能は0.16pH、速度は27.5フレーム/秒である。高スループットのDNAシークエンスや細胞の無標識イメージングなどに応用できるとする。
Columbia UniversityとWeill Cornell Medical Collegeの共同研究グループは、生体に埋め込める極めて薄い脳血流量モニタリングシステムを試作した(講演番号29.6)。システムの厚みは5μmしかない。有機材料の発光ダイオードと有機材料の光検出器を組み合わせて血流を反射測定している。
(次回に続く)
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