可視光と赤外光の画像を同時に撮影:福田昭のデバイス通信 IEDM 2015プレビュー(12)(2/2 ページ)
カンファレンス3日目に行われるセッション30では、オリンパスが、可視光と赤外光を同時に別々の画像として撮像するマルチバンド・イメージセンサーについて講演する。セッション31では、シリコン基板上にIII-V族化合物デバイスを作成する、次世代の電子デバイスや光デバイスについての発表が相次いで行われる。
Si基板に高性能ナノワイヤ化合物デバイスを作成
セッション31(パワーデバイスと化合物デバイス)のサブテーマは「III-V族のFETとフォトニクス、Siとの集積化」である。Si基板上にIII-V族化合物デバイスを作成して次世代の電子デバイスや光デバイスなどを実現しようとする試みが相次いで発表される。
imecを中心とする共同研究グループは、Si基板上に相互コンダクタンスのピーク値が2200μS/μmと高いInGaAs FETを試作した(講演番号31.1)。ゲート長が50nmのゲートオールアラウンド(GAA)型ナノワイヤFETである。サブスレッショルド・スイングの飽和値(SSSAT)は110mV/dec。
Lund Universityは、自己整合プロセスとゲートラスト・プロセスで縦型ナノワイヤInAs MOSFETをSi基板上に作成した(講演番号31.2)。相互コンダクタンスの最大値は1290μS/μm、サブスレッショルド・スイングは90mV/decである。いずれも縦型ナノワイヤFETとしては過去最高の性能だとする。Lund Universityはさらに、InGaAsナノワイヤを中空につるしたMOSFETを報告する(講演番号31.4)。電源電圧が0.5Vのときに3300μS/μmと極めて高い相互コンダクタンスを達成した。サブスレッショルド・スイングは118mV/dec、DIBLは40mV/Vである。
Massachusetts Institute of TechnologyとSandia National Laboratoriesの共同研究チームは、InGaSbを材料とするpチャンネルのFinFETを試作した(講演番号31.6)。III-V族化合物材料でpチャンネルのFETを作成した事例は極めて珍しい。フィンの幅は15nmである。Siとのコンタクトを形成し、平方センチメートル当たりで3.5×10−8Ωと低い抵抗値を得た。
(次回に続く)
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