ルネサス 自動運転車の頭脳となる次世代SoC発表:「自動運転レベル2、3を超えることができる」(2/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは2015年12月2日、車載情報システム向けSoC「R-Carシリーズ」の第3世代品を発表した。2018年以降に市販される自動車への搭載を見込んだ製品群。第1弾製品として同日、サンプル出荷を開始した「R-Car H3」は“自動運転時代のSoC”と位置付けたハイエンド品で、最先端となるTSMCの16nm世代FinFET+プロセスを採用し、高性能な処理能力を盛り込んだ。
DDR4対応
GPUについては、Imagination Technologiesの最新GPUで単精度浮動小数点演算命令をサポートする「PowerVR GX6650」を採用し、グラフィック処理性能を従来比3倍の460GFLOPS(単精度浮動小数点演算性能)にまで高めた。ビデオコーデック性能についても従来比2倍とし、4K解像度の圧縮伸長に対応。画像認識用ハードウェアについても、「従来比4倍の認識処理性能」という独自並列プログラマブルコア「IMP-X5」を搭載した。
さらに「R-Car H3の最大の特長」とするのが、グラフィック処理が多く、車載情報機器用SoCにおける性能のボトルネックとなりがちなメモリバンド幅の大幅強化だ。DDR4-SDRAM-3200対応を実現。バンド幅は従来の12GB/秒から50GB/秒へ4倍以上拡張された。
スマートフォンやタブレット端末用アプリケーションプロセッサさえ上回るコンピューティング性能を持たせたことで、「ドライバーが急病に陥り、運転ができなくなったことを検知し、その上で、クルマを安全な場所へ誘導し、止めるといった処理が行える」とした。
R-Car H3では、自動車の「走る、曲がる、止まる」という走行制御系に積極的に関わるため、「車載向けSoCとしては世界で初めて」(吉田氏)という自動車用機能安全規格「ISO26262(ASIL-B)」対応を実現している。
ローレイテンシで競合を上回る
吉田氏は「R-Car H3のコンピューティング性能は、PCやサーバで重視されるスループット性能だけでなく、ローレイテンシ(低遅延)性能も重視した。センサーフュージョン、認識、判断など車載コンピューティングで必要な多彩な処理にそれぞれ最適なアーキテクチャを使い分け、スループット性能とローレイテンシ性能をバランス良く実現した」と語り、スマートフォンやPC向けプロセッサ技術をベースに相次いで車載用プロセッサ市場に参入している競合他社と一線を画したデバイスである点を強調する。
車載向けビジネスを統括する執行役員常務の大村隆司氏も「ルネサスは、クルマを知り尽くした唯一のメーカーだ。走行制御系マイコンも、車載情報向けSoCも両方手掛け、クルマに特化したアーキテクチャを開発してSoCを実現している」と、絶対的な自信を見せる。
かなり高性能化、大規模化したR-Car H3だが、“使いやすさ”については、さまざまな工夫で対処する。従来のR-Carシリーズとソフトウェア互換を保ち、既存資産を最大限使用できる環境を用意。またR-Carを使用したシステム開発をサポートするパートナー数も170社以上に上り「エコシステムで、ユーザーの開発をサポートしていく」(吉田氏)とする。
さらに、DDR4対応により、手間やコストの掛かる高速信号配線設計や高速対応基板が不可欠となるが、R-Car H3と、DDR4メモリを1パッケージ化したSiP(システム イン パッケージ)モジュール版も製品化し、ユーザー側での高速信号対応を不要にするソリューションを用意した。
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