スピン論理で低消費・高密度の回路を構築:福田昭のデバイス通信 IEDM 2015プレビュー(13)(3/3 ページ)
13回にわたりお届けしてきたIEDM 2015のプレビューは、今回が最終回となる。本稿ではセッション32〜35を紹介する。折り曲げられるトランジスタや、電子のスピンを利用した論理回路、疾患を素早く検知する人工知能ナノアレイ技術などに関連する研究成果が発表される。
650V級のGaNオンSiパワーHEMTを改良
セッション35(パワーデバイスと化合物デバイス)のサブテーマは「GaN材料とデバイスの相互作用」である。
ON SemiconductorとUniversity of Bristol、University of Padovaの共同研究チームは、650V級のAlGaN/GaN HEMTのオフリーク電流(縦方向)とオン抵抗の関係を調べた結果を発表する(講演番号35.2)。なお、このHEMTはGaNオンSiデバイスである。バッファ層に存在する窒化炭素(CN)の捕獲準位(アクセプタ)の動特性と、空間電荷制限電流が、オン抵抗の変動における強い電圧依存性をもたらしていることを見いだした。この知見を基に、420V〜850Vの高温逆バイアス電圧下のオン抵抗の劣化を完全に抑えることを可能にした。
University of Notre DameとUniversity of California, San Diego、Cornell Universityの共同研究グループは、トンネルFETのチャンネル材料としてGaN/InN/GaNと遷移金属ジカルコゲナイド(TMD)を比較した結果を報告する(講演番号35.6)。TMDに二セレン化タングステン(WSe2)を、ゲートスタックにアルミナ(Al2O3)絶縁膜を採用したトンネルFETを試作し、極めて低いリーク電流を得た。
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