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電圧トルクMRAMの安定動作を実証、評価法も開発:究極の省電力メモリ実現に道筋(2/2 ページ)
産業技術総合研究所の塩田陽一研究員は、電圧書込み方式不揮発性メモリが安定動作することを実証するとともに、書込みエラー率の評価方法を開発した。電圧トルクMRAMの実用化に向けた研究に弾みがつくものとみられる。
実質的に10‐10〜10‐15程度の書込みエラー率
産総研によれば、書き込みエラー率が10‐3台であっても、書込み後のベリファイを数回実行することによって、実質的に10‐10〜10‐15程度の書込みエラー率を実現することができるため、メモリとしての安定動作は可能とみている。
産総研では、ベリファイ作業による書き込み速度の低下と、システム性能への影響についても検証した。実測した書き込みエラー率4×10‐3を、コンピュータによるシミュレーション結果と比較したところ、熱じょう乱耐性(Δ)が26、磁気摩擦定数が0.1でシミュレーションした結果と近似していることが分かった。
この結果から、磁気摩擦係数の低減(0.01以下)と、熱じょう乱耐性の向上(50以上)により、ベリファイを行わなくても、10‐15以下の書込みエラー率を達成することが可能とみている。これらの特性を備えたMTJ素子は、垂直磁化がより安定している記録層材料を用い、素子サイズをさらに小さくしていくことで、十分に実現可能であるという。
産総研では今回の研究成果を基に、磁気摩擦定数が小さく、熱じょう乱耐性が高い垂直磁化MTJ素子を開発していくとともに、電圧書込みの高精度化に取り組む計画である。
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