V-LEDのサファイア基板剥離に固体レーザーを採用:車載向けLEDチップなどの生産性、加工品質を向上
ディスコは「SEMICON Japan 2015」において、垂直構造型LED(V-LED)チップの製造に適したフルオートマティックレーザーソー「DFL7560L」を展示した。レーザーリフトオフ(LLO)に固体レーザー技術を採用することで、高い加工品質やメンテナンス性を実現する。
ディスコは「SEMICON Japan 2015」(2015年12月16〜18日、東京ビッグサイト)において、垂直構造型LED(V-LED)チップの製造に適したフルオートマティックレーザーソー「DFL7560L」を展示した。独自のレーザーリフトオフ(LLO)技術を新たに開発/採用し、サファイア基板などから材料層を剥離する工程で、高い加工品質やメンテナンス性を実現する。
V-LEDチップは、自動車のヘッドランプや殺菌用紫外線照射器などの光源として採用が広がる。一般的にLEDチップはサファイアの基板上にGaN(窒化ガリウム)などを積層して製造する。V-LEDチップの製造工程では、発光層を放熱特性に優れた導電性基板へ張り替える。このあとベースのサファイア基板を剥離するために、レーザー光を照射する。剥離するのは輝度の向上や発熱対策のためだ。長寿命化にもつながるという。
DFL7560Lは、この剥離プロセスに固体レーザーを採用した。ガスレーザーを用いた他社製の従来装置と比べて、「定期的なガス交換など消耗品の交換やその都度必要となる光軸調整などの頻度を低減することができ、メンテナンス時間を大幅に削減することができる」(説明員)と話す。独自の光学系を採用することで、広い焦点範囲を適切なパワーで加工することができるため、ウエハーダメージや剥離不良を減らすなど加工品質も高い。
高さ方向の加工マージンが広いのも同社の特長だ。GaNなどを用いたパワーデバイスでは、性能を向上させるためウエハーの厚みを薄くする。しかし、そのままだとプロセス処理を行う際にウエハー反りが生じてしまうため、テープ転写技術でガラスなどの基板にウエハーを貼り付けて加工を行う。最終的に不要な基板を剥離するが、レーザーパワーの最適化などにより熱の発生を抑えることでテープ転写の利用を可能とした。レンズなど光学系にもよるが最大500μmの高さバラツキがあっても十分な加工品質を保つことが可能だという。
DFL7560Lは生産性も高い。加工対象のウエハーをテーブル上に固定し、レーザーをスキャンして照射する。加工時間は2インチウエハーで60秒、3インチウエハーで90秒、4インチウエハーだと120秒程度で処理することができる。
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