ホワイトスペース対応のベースバンドIC開発:コストは1/10以下、消費電力は約1/15を実現
情報通信研究機構(NICT)ワイヤレスネットワーク研究所は、テレビ帯におけるホワイトスペースで無線LANを利用することができるベースバンドICの開発に成功した。IC化により、小型で消費電力が小さい通信装置を実現することができる。
情報通信研究機構(NICT)ワイヤレスネットワーク研究所は2015年12月、テレビ帯におけるホワイトスペースで無線LANを利用することができるベースバンドICの開発に成功したことを発表した。同時に同IC搭載のカード型データ通信装置も試作した。IC化により、小型で消費電力が小さい通信装置を実現することが可能となった。
開発したベースバンドICは、ホワイトスペースを利用する無線LANの国際標準規格「IEEE802.11af」に準拠している。これまでFPGAで実現していたベースバンド処理部をIC化することで、通信装置の小型化、消費電力やコストの節減などを可能とした。
新開発のベースバンドICを搭載したカード型データ通信装置も試作した。UHF帯のアンテナを一体化している。市販のノートPCなどとUSBコネクタで接続することができ、USB給電により通信が行える。カード型データ通信装置は、これまでに開発したボックス型のデータ通信装置に比べて、サイズを約1/40に小型化、重さは約1/30に軽量化している。さらに、消費電力は約1/15、試作開発のコストは1/10以下に抑えている。
カード型データ通信装置は、アクセスポイント及びステーションのいずれにも使用することが可能となっている。このため、複数のカード型データ通信装置を用いれば、ホワイトスペース無線LANネットワークを容易に設置することができ、トラフィックが集中しても効率的に分散することが可能となる。
送信信号の波形は、各国のテレビホワイトスペースにおける法規制に準拠している。例えば、英国の規制では100mW、米国の規制では50mWの送信電力でそれぞれ通信を行うことが可能だ。また、IEEE802.11af規格で定めているBPSKとQPSKに対応しており、2台使用すれば、通信速度は最大約2.6Mビット/秒を実現することができる。
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