フィリピンの無料インターネット接続、NICTのTVホワイトスペース技術を採用:無線通信技術
情報通信研究機構(以下、NICT)は、フィリピン科学技術省情報通信技術局(ICTO)との間で、NICTが開発したTV放送帯ホワイトスペースの有効利用に必要な周波数管理技術をICTOに提供する契約を結んだ。
情報通信研究機構(以下、NICT)は2015年5月、フィリピン科学技術省情報通信技術局(ICTO)との間で、NICTが開発したTV放送帯ホワイトスペースの有効利用に必要な周波数管理技術をICTOに提供する契約を結んだ。ICTOは今後、同技術をベースとしてフィリピン全域で無料のWi-Fiインターネット接続を可能とするインフラ整備を行う。
ICTOは、政府機関や公園、病院、公立学校、空港、港湾、駅などフィリピン全域の公共スペースにおいて、無料でWi-Fiインターネット接続を可能とするインフラ整備を計画している。ICTOは、「Free Wi-Fi Project」と呼ぶこのプロジェクトを実現する技術の1つとして、TV放送帯のホワイトスペース技術に注目しており、2015年3月にNICTと覚書を交わして、NICTが開発した技術の導入を検討してきた。
ホワイトスペースとは、放送などの目的で割り当てられた周波数帯の中で、本来のシステムで利用されてない場合や、本来のシステムに及ぼす影響が極めて小さい場合に、通信など他の目的で2次的に用いることが認められた周波数帯である。ただし、ホワイトスペースを活利用するに当たっては、地域ごとに利用可能な周波数であるかどうかを分析し管理するための技術「ホワイトスペースデータベース」(以下、データベース)が必要となる。
ICTOが利用するデータベースには、ICTOが提供したフィリピン全域のTV放送送信所の情報が登録されている。この位置情報と地形情報に基づいて放送エリアを算出し、指定した地点において通信に利用可能なチャネルの一覧を作成することが可能となる。
将来的には、TVホワイトスペースを利用する通信システムが、位置情報をデータベースに送信して運用可能なチャネルをデータベースから通信システムへ自動的に送信することで、継続運用することも可能となる。なお、フィリピンでは2015年2月より地上デジタル方式(ISDB-T)によるデジタルTV放送サービス始まっている。このため、今回のデータベースにおける放送エリアの計算方式は日本と同じ方式を採用した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 家電向けのWi-SUN無線機を開発――NICT「世界初」
情報通信研究機構(以下、NICT)は2015年1月30日、Home Area Network(宅内無線ネットワーク/以下、HAN)用Wi-SUN認証規格に準拠した無線機を開発したと発表した。 - 200インチ裸眼3Dディスプレイに映るCGを自在に操れるシステムを開発
情報通信研究機構(NICT)は2015年3月、200インチサイズの超多視点裸眼3DディスプレイにCG(コンピュータグラフィックス)映像を瞬時に生成、表示できるシステムを開発したと発表した。 - NICTが新たなマイクロ波原子時計を開発、高速通信や測位の精度向上が可能に
情報通信研究機構は、イッテルビウムイオンを用いたイオントラップ型マイクロ波原子時計の開発と試作に成功したと発表した。現在、放送分野や精密測定分野で一般的に利用されているルビジウム原子時計に比べ、約5倍の精度を実現できるという。 - 8K非圧縮映像の長距離伝送、NICTなどが実験に成功
情報通信研究機構などは、研究開発用のテストベッドネットワーク「JGN-X」上で、さっぽろ雪まつりで収録された8K(7680×4320画素)非圧縮映像の長距離伝送(東京〜大阪間)に成功した。同社は「100Gビット/秒のネットワークを利用した8K非圧縮映像の長距離伝送は世界で初めて」と主張する。 - バスが人も情報も運ぶ、NICTの端末間通信システム
情報通信研究機構(以下、NICT)は、中央制御局を用いずに端末間だけで通信を行えるネットワークシステムを紹介した。端末は、互いの通信範囲に入ると自動的にネットワークを形成して通信を行う。東京都港区や京都府精華町で、サイネージ端末を搭載したバスを用いて実証実験が行われている。