脊髄機能を見える化するセンサー、MRIと併用へ:リコーが「ナノテク展」で出展
リコーは、2016年1月27〜29日に東京ビッグサイトで開催された「国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」で、エレクトロクロミック技術や電子調光サングラス、電子アートガラスなどを展示した。本記事では、参考出展されていた脊髄機能を見える化するセンサーについて紹介する。
リコーは、2016年1月27〜29日に東京ビッグサイトで開催された「国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(以下、ナノテク展)で、エレクトロクロミック技術や電子調光サングラス、電子アートガラスなどを展示した。
展示の中で、目を引いたのが「脊髄機能の見える化」という展示。リコーによると、同技術は東京医科歯科大学と金沢工業大学と共同で研究を進めており、ナノテク展で初めて公開したという。脊髄機能の見える化とは、一体どのような仕組みなのだろうか。
SQUIDセンサーを活用
同社が展示した脊髄機能の見える化するシステムは、神経活動により生じる生体磁気をセンサーで計測し、障害のある場所を特定する仕組みだ。例えば、椎間板ヘルニアになったときに、手術をしたにもかかわらず症状が良くならないことがある。
その理由は、椎間板ヘルニアの検査に用いられるMRIは骨の形状が正常かどうかを把握できるが、神経活動が伝達していない部位までは把握できないからである。そのため、神経活動を把握するのに体に針を刺して確認するといった方法が考えられるが、神経自体を傷つけてしまうといったリスクが伴ってしまう。
また、痛みが生じる箇所に病気の原因があるとは限らないため、神経系の病気は原因がどこにあるのか非常に分かりにくいという。そうした神経活動が伝達していない部位を特定するために開発されたのが、脊髄の神経活動を見える化するシステムである。
同システムで活用するのは、「SQUID(Superconducting Quantum Interference Device:超伝導量子干渉素子)センサー」と呼ばれる磁気センサーである。SQUIDセンサーは、脳や心臓から生じる磁気信号を計測するのに活用されるなど、数十フェムトテスラ(10−15T)の微弱な磁界を検出可能だ。しかし、脊髄から生じる磁気信号は、心臓や脳よりはるかに弱い。同社は今回、画像機器で培ってきた画像処理技術を活用することで、脊髄機能を見える化するまでの精度を実現したとしている。
これにより、原因がどこにあるのか分かりにくい神経系の症状を可視化することが可能になる。また、「測定時間もPCで行う画像処理も含めて1カ所に数十分程度であり、生体の磁気を検査するため、患者への負担をかけない」(同社)とした。
MRIと併用へ
同システムは、SQUIDセンサーが束になっている機器を体の下に配置。その後、体に電気的な刺激を与えて、センサーから得られた磁場データを電流の信号に変換する。電流が急に消えたり、小さくなったりしたときが神経活動の異常を示すサインである。
同社は今後、同システムの臨床試験を進めていく。また、導入の際はMRIを置き換えるのではなく、MRIと併用することでより効果的な診断が可能になるとした。
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