300GHz帯の無線通信技術を開発、伝送速度100Gb/秒:8Kの映像信号を無線で接続可能に?
情報通信研究機構(NICT)は、広島大学とパナソニックと共同で、テラヘルツ波(300GHz帯)を用いた、伝送速度100Gビット/秒を超えるデジタル情報の無線伝送を可能にする技術の開発に成功したと発表した。NICTによると、同技術の実現は「世界で初めて」という。
情報通信研究機構(NICT)は2016年2月1日、テラヘルツ波(300GHz帯)を用いた、デジタル情報の無線伝送を可能にする技術の開発に成功したと発表した。デジタル信号処理回路との接続が容易なシリコンCMOS集積回路を用い、独自の周波数変換回路と電力合成技術を適用することで、100Gビット/秒の無線伝送を実現している。
同研究は広島大学とパナソニックと共同で行われ、「世界で初めての成功」(NICT)とする。実用化されれば、データセンター内のデジタル情報やスーパーハイビジョン(8K)の映像信号を光ケーブルなどを使用しなくても、無線で接続できるとしている。
シリコンCMOS集積回路による実現の必要性
テラヘルツ波帯は、一般にはまだ利用されていない周波数資源である。テラヘルツ波帯を用いた無線システムは、広い周波数帯域を利用可能で、高速通信に優れるといった特長を持つ。従来、テラヘルツ帯信号を用いた無線通信実験は、高周波動作に有利な化合物半導体を用い、出力をオン/オフして通信を行う回路方式の検討が行われていた。
しかし、「多値変調回路との集積化が容易なシリコンCMOS集積回路で、テラヘルツ帯信号の無線伝送を可能にする技術が望まれていた」(NICT)という。多値変調回路は、デジタル信号処理回路との組み合わせや伝送速度の高速化に必須となるからだ。
3つの技術を用いて実現
NICTなどは今回、3つの技術を用いてシリコンCMOS集積回路による実用的なテラヘルツ帯の信号生成を実現している。1つ目は、局部発振信号と中間周波数帯の変調信号を同時に3次非線形回路に入力する独自の周波数変換技術である。これにより、局部発振信号の周波数帯を300GHz帯から100GHz帯に下げることができ、中間周波数帯から300GHz帯へ変調信号を歪ませずに周波数変換を行うことが可能になる。
2つ目は、周波数変換後の信号を32個並列に接続し、300GHz帯の出力信号を大きくするための電力結合技術だ。3次非線形回路による周波数変換技術は増幅動作までは行えないため、無線通信を実現するには出力信号レベルが小さいことが課題になる。そこで、3次非線形回路を並列接続し電力を結合する技術を開発した。「並列化回路の配置設計が効率的に行え、電力結合が効果的に行えることを考慮して32並列にしている」(NICT)という。
3つ目は、入力信号を増幅しつつ電力分配することで、無線送信回路に必要となる差動信号を効率よく発生させる増幅回路技術である。トランジスタによる回路に増幅機能と差動信号を生成する機能を組み込むことで、回路の小型化を実現している。
今後は、受信回路と変復調回路を
今回は送信回路の実現のため、受信回路と、高速通信に対応したデジタル信号処理による変復調回路が必要になる。今後は、「これらの必要な回路の基盤技術を開発し、シリコンCMOS集積回路による無線通信システムの実用化を目指す」(NICT)としている。
訂正とおわび
公開当初タイトルが「300GHz帯の無線通信技術を開発、伝送速度100GB/秒」となっておりましたが、正しくは「300GHz帯の無線通信技術を開発、伝送速度100Gb/秒」の誤りでした。おわびして、訂正致します。
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