ルネサス、15年度減収減益へ――中計は5月発表へ:利益率は改善
ルネサス エレクトロニクスは2015年度の第3四半期業績と通期業績予想を発表した。通期業績は利益率こそ改善するものの、減収減益となる見通しだ。
ルネサス エレクトロニクスは2016年2月9日、2016年3月期(2015年度)通期業績見通しを発表した。不採算/非注力事業からの撤退の影響を主に受け、売上高は前年比10.7%減の6725億円にとどまる見通しとなった。売上総利益率については、固定費削減効果と為替影響もあり、前年比3.6ポイント改善し、43.9%となると予想。営業利益率も同1.3ポイント改善するも、営業利益自体は減収が響き、前年比44億円減の1000億円になるとした。
第3四半期も減収減益――震災後の影響も
この日発表した2015年度第3四半期業績は、前年同期比、前四半期比ともに9%減収の売上高1609億円。営業利益も前年同期比45億円減、前四半期比58億円減の250億円にとどまった。減収減益の要因としては、車載向けを除く汎用事業を中心とした非注力事業からの撤退に伴う売り上げ減が主な要因。ただ、注力事業に限っても、減収傾向になっており、中国経済の成長鈍化など足元の市況悪化や円高も減収減益要因となった。
加えて車載向け事業で「(2011年3月の)東日本大震災震災後のデザインイン喪失の影響が生じている」(常務兼最高財務責任者 柴田英利氏)とし、非注力事業撤退影響と合せて当面は、現状の減収トレンドが続く見通しだ。
ただ、柴田氏は「足元の(車載向け事業における)デザインインについては、好調。3〜5年後(の業績)については楽観視している」と語り、マイコンに比べ車載市場でのシェアが低いアナログ/パワー半導体製品で新たな受注を獲得できている点を強調した*)。
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第4四半期については、売上高こそ横ばいを予想するものの、期末の費用集中や第3四半期までプラスに作用していた構造改革に伴う製品作りだめ効果がマイナス影響に転じることから第3四半期比から大きく減益となる見込みだ。
それに伴い通期業績も減収減益予想となったが、柴田氏は「売上高低下は分かってやっていること。仕方ないこと」と減収に関しては意に介さない。利益面については、減益ながら、売上総利益率、営業利益率については改善しており、収益性を重視した構造改革の成果は着実に発揮しているといえる。
成長に向けては依然、不透明感
ただ、売り上げ拡大を含めた成長に向けたかじ取り役として、2015年6月に会長兼CEO(最高経営責任者)に就任した遠藤隆雄氏が2015年12月25日に「一身上の都合」を理由に突然辞任*)。成長路線への転換に遅れが生じる懸念が広がっている。
*)関連記事:ルネサス 遠藤会長兼CEOが辞任
柴田氏は、遠藤氏の辞任について「2015年12月25日に発表した通り」との説明にとどめ、遠藤氏の後任としてCEOに就任した社長の鶴丸哲哉氏のもとで「現在、しかるべきタイミングで中期計画を発表できるよう粛々と準備を進めている」と語り、2015年度通期業績発表時期(2016年5月ごろ)に、中期の成長戦略を公表する考えを示した。
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