Google CarのAIは“運転手”、米運輸省が認める:自動運転車の実用化が前進するきっかけに?
米運輸省が、Googleの自動運転車を制御するコンピュータ(AI:人工知能)を“ドライバー(運転手)”と認める見解を示した。運転において人間が果たす役割は、まだ極めて大きいものの、自動運転車の実用化が前進するきっかけとなるかもしれない。
米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が、Googleの自動運転車プロジェクト担当ディレクタを務めるChris Urmson氏宛て送付した書簡の中で、「Googleの自動運転車はコンピュータ制御によるものだが、連邦規則に基づき、ドライバーが運転しているものと見なす」との見解を示したことが明らかになった。
米国の幹線道路における自動運転車の実用化を進める上で、大きな前進となりそうだ。
AIは“ドライバー”
Googleは、同社の自動運転車は、自動運転システム(SDS:Self-Driving System)によって制御されているため、完全な自律走行が可能だとしている。
SDSでは、人工知能(AI)が運転者ということになる。専用に開発されたコンピュータで、自動車周辺の環境を把握して対応することにより、あらゆる側面から運転を制御することが可能だ。
NHTSAは今回、このようなAIに対し、運転者としての資格を十分与えられると判断したという。
NHTSAは2016年2月、「NHTSAとしては、Googleが自動車設計の中で“ドライバー”と見なしているのはSDSであり、誰か他の同乗者を指すわけではないとの解釈に至った。これまで100年以上にわたって使われてきた従来の意味での“ドライバー”は、Googleの自動運転車には存在しないという見解に同意する」と述べている。
Googleの自動車は、あらゆる種類のセーフティクリティカルな運転機能を実装し、走行中は常時、道路状況を監視することができるよう設計されているという。
このようなシステムでは、ドライバーは、目的地やナビゲーションに関する情報を提供しても、走行中に常時運転に携わる必要はない。また、自動車に人が乗っている場合と乗っていない場合の両方が想定される。
Googleは、車載用デバイスや機能をどこに配置するのかなどを決める上で、自動運転車では“誰”または“何”をドライバーと見なすのか、どの座席をドライバー用の場所と位置付けるのかを問い求めたという。
NHTSAは、「次の問題となるのは、GoogleのSDSが、人間のドライバーが運転する自動車向けに策定された基準に準拠しているかどうかを、どう判断すればよいのかという点だ」としている。
Googleは、今回のNHSTAからの見解を得たことに加え、米国と英国において実地試験も進めている。英国では、ロンドンの運輸当局との協業により、ロンドンの道路上で自動運転車の試験を開始しているという。
同社は2016年2月初めに、米国内での試験計画の拡大を発表したところだ。米国ワシントン州カークランド(Kirkland)において、同社の自動運転車「レクサス RX450h」を走行させる予定だという。
オバマ政権も40億米ドルを投入
2016年1月、オバマ政権は、ハイウェイでの自動運転を普及すべく、今後10年間で約40億米ドルを投入することを提案したと発表した。自動運転に対する規制は、米国内では州によって異なる。そのためNHSTAは、どの州でも適用できるような法規制を策定しやすくなるよう、テンプレートを作成するとしている。
自動運転車は、自動車業界にとって将来を担う技術かもしれないが、人間のドライバーの必要性は、まだ極めて高い。Googleは2016年1月、自動運転車で42万4000マイル(約68万km)に及ぶ試験走行を行った結果、人間のドライバーに交代せざるを得なかったケースが341回あったという。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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