USB 3.1/Type-C対応、昇降圧チャージャーIC:BOMコストは最大40%低減、効率は90%
インターシルは、USB 3.1/Type-C規格に対応する昇降圧バッテリーチャージャーIC「ISL9237」を発表した。新製品は1個のICで昇降圧に対応しており、従来に比べてBOMコストを低減でき、電力効率を向上することが可能である。
インターシルは2016年2月18日、USB 3.1/Type-C規格に対応する昇降圧バッテリーチャージャーIC「ISL9237」を発表した。昇圧用と降圧用にこれまで2個のICを必要としていた。新製品は1個のICで済むため、BOMコストの低減と電力効率の改善が可能となる。
ISL9237は、Intelが提案するタブレットPCやノートPC向け高効率電源アーキテクチャ「Narrow VDC(NVDC)」に対応したバッテリーチャージャーICである。独自の高速負荷応答技術「R3テクノロジー」も採用している。降圧モード、昇降圧モード及び昇圧モードをサポートしており、さまざまなDC電源から、1〜3セルのリチウムイオンバッテリーに給電することができる。「USB3.1/Type-C準拠のバッテリーチャージャーICで、昇圧ICと降圧ICを1チップに集積したのは業界で初めて」と同社は主張する。
実装面積は20〜30%の削減が可能
これまでのUSB 3.1/Type-C対応バッテリーチャージャーシステムは、昇圧ICと降圧ICの2チップで構成されていた。今回は独自の昇降圧回路技術などをベースに、1チップ化を実現できたという。従来システムに比べて、チャージャーICとインダクターを不要にしたことで、BOMコストは最大40%節減することができる見通しだ。実装面積は20〜30%の削減が可能になるとみている。
また、5V出力リバース降圧モードもサポートしている。これによってUSB3.1/Type-Cコネクターで接続された機器間で、双方向の受給電を行うことができる。「開発中の次期製品は、12/20V出力のリバース昇圧モードにも対応する予定」(同社)である。充電ステージは従来の2ステージ構成から、1ステージ構成に低減することができる昇降圧機能により、電力変換効率を向上することができる。従来の80%程度に対して、新製品は約90%に改善することが可能だという。
3直列セルのリチウムイオン電池対応
ISL9237の入力電圧範囲は3.2〜23.4Vで、AC-DCチャージアダプターやUSBパワーデリバリーポートなどのDC電源から電力を入力できる。システム出力電圧範囲は2.4〜13.824Vで、最大3直列セルのリチウムイオンバッテリーパックに充電することが可能である。
また、ISL9237はバッテリーとチャージアダプターを連係動作させることができるシステムターボモードを備えた。これにより、システム負荷がアダプターの容量を超えた場合でも、不足分をバッテリー側から給電することができる。この他、Intelの「PROCHOT#」と「PSYS」に準拠した、過電流/過熱などに対する保護機能、バッテリーの自己放電を補償するために微弱電流で充電し続けるトリクル充電機能などをサポートしている。
ISL9237は、外形寸法が4×4mmの32端子QFNパッケージで供給を始めた。1000個一括購入時の単価は3.50米ドルである。
同社は、第6世代Intel Coreプロセッサ「Skylake」を搭載したモバイルコンピュータ向け電源ソリューションとして、パワーマネジメントICの「ISL95852」や「ISL95908」、ディスクリートPWMコントローラ「ISL95853/54/55/57」などを供給している。ISL9237は、これらの機器に加えて、予備バッテリーやデジタルカメラなども含め、さまざまなUSB 3.1/Type-C対応機器に向ける。
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