自動車業界にとって5Gとは何か(後編):DSRCは短命に終わるのか?(1/3 ページ)
米国では数年のうちに、DSRC(狭域通信)を車載通信技術として搭載することが義務付けられるともいわれている。もちろん、どの国でもそういった傾向にあるわけではない。5Gの性能が十分であれば、DSRCが短命に終わる可能性も否定できない。
では、5Gが、現在使用可能な無線(すなわちDSRC[Dedicated Short Range Communications:狭域通信]やLTE)以上のものをもたらすことができるというなら、それは一体何だろうか。
その答えは、モバイルネットワークサプライヤーが、5Gで構築し直そうとしている既存のDSRCとLTEの機能にたどり着く。
IHS Automotive Technologyのリサーチ担当ディレクターであり、主席アナリストを務めるEgil Juliussen氏は「DSRCは10年近くにわたり徹底的にテストされたので、実装の準備は整っている。DSRCでは、事故による大規模な損失を低減するセーフティアプリケーションに主な重点が置かれている」と説明した。同氏の推測によると、GDPに対する事故による損失額の割合は、ほとんどの途上国で約2%、その他の多くの国では1%だという。
Juliussen氏は「米国ではV2V(Vehicle to Vehicle)通信が義務付けられる見込みだが、ほかの国ではそのようにはならないとみられる」と述べた。
「LTE V2X」を推進するHuaweiとQualcomm
HuaweiとQualcommは、「LTE V2X(Vehicle to everything)」と呼ばれ、「LTE Device-to-Device(D2D)」としても知られる規格を提唱することで、新興のV2X市場に注力している*)。両社は、LTE V2Xを、DSRCに代わる規格として推進し、自動車産業での足掛かりを作ろうとしている。5Gは、車載向け通信をネイティブサポートできる可能性があるが、HuaweiやQualcommは、LTE V2Xを5Gの“前触れ”と考えているのかもしれない。
*)関連記事:「LTE V2X」は新たな規格係争の火種となるのか
Juliussen氏は「LTE V2Xは、セーフティアプリに使えるかどうかは実証されていない。5Gについてもそうだ」と述べ、「法的責任が求められる自動車産業では、実証されていない技術を採用することはできない」と付け加えた。
Strategy Analyticsのグローバルオートモーティブ部門でアソシエイトディレクターを務めるRoger Lanctot氏は、「DSRCのように、全く新しいネットワークをゼロから構築する必要はない。既存のモバイルネットワーク技術をLTEや5G上に展開すれば、市場主導のソリューションとして成功する可能性は高くなる」という見解を示した。
LTEベースのV2Xの強みは、LTEというモバイルネットワークが既に存在している点にある。だが5Gは、まだ規格策定の段階だ。
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