ARM車載マイコンの拡張に注力――サイプレス:いずれはCortex-Mもファミリーに加わる?(2/2 ページ)
Cypress Semiconductor(サイプレス セミコンダクタ)は、ドイツ ニュルンベルクで開催された「embedded world 2016」で、最新のプログラマブルなSoC(System on Chip)「PSoC 4 Sシリーズ」や、車載向けマイコン「Traveo」のデモを展示した。
8ビット/16ビットマイコンの置き換えも狙う
PSoCでは、2016年1月に発表されたばかりの「PSoC 4 Lシリーズ」と、embedded world 2016の会期中に発表された「PSoC 4 Sシリーズ」の展示に力を入れた。PSoC 4 Lシリーズは、CPUにARMの「Cortex-M0」コアを搭載し、容量が最大256Kバイトのフラッシュメモリ、98個の汎用I/O、合計33個のプログラマブルアナログとデジタルブロックおよびUSBデバイスコントローラ、CANインタフェースなどを搭載している*)。PSoC 4 Sシリーズは、「Cortex-M0+」コアを搭載し、16Kバイト〜64Kバイトのフラッシュメモリ、最大36個の汎用I/O、9個のプログラマブルアナログブロック、7個のプログラマブルデジタルブロックなどを搭載する。これによりPSoC 4シリーズは、8K〜256Kバイトのメモリ容量を持つ製品群となった。
*)関連記事:タッチ検出機能などを強化、PSoC 4Lシリーズ
CypressでProduct Marketing Manager Srを務めるJim Davis氏は、「PSoC 4シリーズでは、IoT(モノのインターネット)分野の中でもとりわけウェアラブル機器に大きな市場機会があると考えている。1つは、当社には静電容量タッチセンシングソリューション『CapSense』があること。もう1つは、PSoCにはプログラマブルなアナログ/デジタルブロックがあることだ」と述べる。「ほとんどのウェアラブル機器は、薄型化や小型化するために、メカニカルなボタンやスイッチを付けずに静電容量センサーを採用している。また、プログラマブルなアナログ/デジタルブロックによって、さまざまなセンサーからのデータを1チップで処理することができる」(Davis氏)。
Davis氏によれば、PSoC 4シリーズの売り上げは極めて好調で、PSoC 4シリーズ向けの開発キットは2014年に発売されて以来、4万個以上が出荷されたという。
PSoC 4シリーズの主なターゲット市場はIoTだが、PSoC 4 Sシリーズでは、IoT市場に限らず、8ビット/16ビットマイコンからの置き換えも狙う。Davis氏は「多くの顧客は32ビットマイコンに移行したがっている。32ビットのARMコアを搭載し、プログラマブルなアナログ/デジタルブロックによって機能や通信インタフェースをカスタマイズでき、安価なPSoC 4 Sシリーズであれば、そうしたニーズに応えられる」と説明する。「PSoC 4 Sシリーズでは130nmプロセスを用いていることもあり、価格帯は0.25〜2米ドルと低く抑えられている。8ビット/16ビットマイコンに対する価格競争力は強いと考えられる」(同氏)。
PSoC 4 Sシリーズは現在サンプル出荷中で、2016年第1四半期に量産を開始する。Davis氏によると、同シリーズの開発キットは同年3月にリリースされ、価格は、BLEモジュールを搭載したものは10米ドル、非搭載であれば4米ドルである。
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