ドローンに“自律”をもたらすGPU搭載スパコン:消費電力は10W以下
NVIDIAは、モジュール型のスーパーコンピュータ「Jetson TX1」を提供を国内で開始した。処理能力が1TFLOPS以上でありながら、消費電力を10W以下におさえている。これにより、ロボットやドローンの自律機器としての能力を高めることができるという。
NVIDIAは2016年3月1日、モジュール型のスーパーコンピュータ「Jetson TX1」の提供を国内で開始した。機械学習やコンピュータビジョンなどの処理に高い性能を実現し、ロボットやドローンの自律機器としての能力を高めることができるという。
サイズは、50×87mmとクレジットカードより少し小型となっており、GPUに同社のMaxwellアーキテクチャ、256基のCUDAコアを搭載。他にも、64ビットのARM-A57 CPU、1400Mピクセル/秒をサポートするカメラ、4GバイトのLPDDR4、16GバイトのeMMCなどを搭載している。対応するOSは、Linux for Tegraである。処理能力が1TFLOPS以上でありながら、消費電力を10W以下におさえたのが特長だ。
NVIDIAの自律機器向けプラットフォーム部門でプロダクトマネジャーを務めるJesse Clayton氏。手に持っているのが、モジュール型のスーパーコンピュータ「Jetson TX1」である (クリックで拡大)
自律性の鍵は「機械学習」
昨今、ロボットやドローンなどをはじめ、機械学習が多くの機器で活用さている。対話ができるロボットや、災害の救助を行うドローンなどが分かりやすい例だろう。NVIDIAの自律機器向けプラットフォーム部門でプロダクトマネジャーを務めるJesse Clayton氏は、「技術の進歩の伴い、ロボットやドローンなどの機器には自ら学んで稼働する自律性が求められている。そのためには、正確に堅牢な形で“ものを見る機能”が必要だ。“ものを見る機能”を持つ成功の鍵は、機械学習にある」と語る。
しかし、機械学習で学習させたニューラルネットワークの推論には多くのデータ処理が伴うため、高い処理性能が求められる。その解決方法として、Clayton氏は「得られたデータをクラウドにあげる方法がある。しかし、クラウドだとデータをあげて処理を行うまでに遅延が伴う。性能の良いプロセッサでも65Wの消費電力がかってしまい、大きな冷却システムが必要になるため、モーターサイズが大きくなってしまうのだ。最近はGPUが活用されているが、全体的にバランスの良い製品がなかった」とする。
Jetson TX1は今回、従来モデルである「Jetson TK1」よりGPU/CPUの性能を上げたことで、処理能力を1TFLOPS以上、消費電力10W以下を実現したという。ドローンの開発を行っているenRouteの開発部長を務めるKai Yan氏は、「消費電力10W以下で動作するのは初めてで、ドローンの可能性を広げることができる」と語った。
Jetson TX1の米国における価格は、1000個購入時で299米ドル/個で、国内では菱洋エレクトロが販売代理店を務める。開発キットを2016年3月、モジュール単体を2016年上半期に提供予定。米国での開発キットの価格は、599米ドル/個となっている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 人の“模倣”ではないAIで、未来を作る
NTTは、「R&Dフォーラム 2016」の一般公開を前に、主な展示をプレス向けに紹介した。AI(人工知能)を搭載した“ぶつからないクルマ”や、眼球の動きから“好みのタイプ”を判別する技術、VR(仮想現実)を利用したスポーツトレーニングのデモなどが披露された。 - モバイル用ニューラルネットワークチップを開発
GPUの性能を10倍ほど上回るモバイル機器向けニューラルネットワーク(神経回路網)チップを米大学が開発した。 - ディープラーニングの発展はGPUが加速させる?
NVIDIAは、産業用機器に向けたディープラーニング(深層学習)技術の開発において、Preferred Networksと技術提携をすると発表した。自社の高性能な演算処理能力を持つGPUを用いることで、ディープラーニングの可能性を最大限に広げていくとしている。 - AIの“苦悩”――どこまで人間の脳に近づけるのか
人工知能(AI)の研究が始まった1950年代から、AI研究の目的は「人間の大脳における活動をいかにコンピュータ上で実現させるか」だ。大手IT企業や大学の努力によって、AIは少しずつ人間の脳に近づいているのは確かだろう。一方で、自然言語処理の分野では、“人間らしさ”を全面に押し出した「人工無能(人工無脳)」も登場している。