電波と人体の相互影響を調査できるソフトウェア:放射線のばく露評価や自動車衝突解析にも
情報通信研究機構(NICT)は、電波と人体との相互影響調査などの数値人体モデルを用いたシミュレーションを行うためのソフトウェアを公開した。従来のソフトウェアと比較して、さまざまな無線通信端末からの電波による人体内部の影響を、より詳細に推定できるという。
情報通信研究機構(NICT)は2016年3月8日、電波と人体との相互影響調査などの数値人体モデルを用いたシミュレーションを行うためのソフトウェアを公開した。
放射線のばく露評価や自動車衝突解析にも
数値人体モデルとは、人体の形状を微小な要素の集合体として表現したものである。各微小ブロックには、その部位に対応する組織/臓器名が与えられ、その組織/臓器に対応する電気定数を与えることで、電磁界シミュレーションに用いることができる。
NICTは、電波が人体内部にどのような影響を及ぼすかをコンピュータ上でシミュレーションするため、数値人体モデルや、その姿勢変形ソフトウェアを公開。数値人体モデルは既にデータベースを提供し、200以上の研究機関で利用されているという*)。
*)NICTが過去に公開した人体モデル:2mmの立方体ブロックで構成、51種類の人体組織/臓器を有する日本人成人男女の人体モデルおよび56種類を有する妊娠女性モデル。ソフトウェアの利用申請なども上記URLから行える。
今回発表したソフトウェアは、数値人体モデルを用いた人体に対する電波ばく露評価に必要な機能を持つとする。これまで公開していたソフトウェアと比較し、自由形状変形手法による姿勢変形機能などが新しくある。妊娠女性モデルの姿勢変形も可能。さまざまな無線通信端末からの電波による人体内部の影響を、より詳細に推定できるという。
また、ブロックで構成した人体モデルをCADソフトウェアなどで利用しているメッシュ形状のモデルに変更できる。これにより、放射線の被ばく線量評価や自動車衝突解析といった、幅広い研究分野で利用しやすくなるとしている。
NICTは、同ソフトウェアの機能を拡張していき、順次公開していくとした。
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