今こそ問いたい――そのダイエット、本当に必要ですか:世界を「数字」で回してみよう ダイエット(28)(4/10 ページ)
ダイエットシリーズも、いよいよ最終回です。今回は、私が、150日にわたりダイエットを行った結果として得たメリットとデメリットを紹介します。結局のところ、私たちは「ダイエットに失敗する」という運命から逃れられないのかもしれません。それでも、ダイエットに関する情報は日々氾濫し、その市場が縮小することはないように思われます。だからこそ、こう問いかけたいのです。「そのダイエットは、本当に必要ですか?」と――。
「糖質制限ダイエット」のホントのところ
では次に、最近、いろいろ話題となっている「糖質制限ダイエット」についても考えてみたいと思います。
このダイエットについての私なりの理解をひと言でまとめると、「ガソリンを入れないで走らせ続ける自動車」です。
人間が、動くためのエネルギーを得る最もてっとり早い手段は、糖質(炭水化物)を食べることです。糖質は、ガソリンのように簡単に引火して、エネルギーに変換されるからです。
糖質制限ダイエットとは、このお手軽なガソリンの補給を断ってしまうことです。そうすれば、ガソリン以外のものをエネルギーに変換しなければならなくなります。
脂質やタンパク質は、糖質のようにダイレクトな燃料として使うには、少々不便な性質を持っていますので、現在蓄えているぜい肉が、燃料に回されやすくなる、というものです。糖質制限ダイエットは、「痩せる」という目的に関しては、理にかなった方法といえるでしょう。
しかし、本来、ガソリンとして使われているエネルギーが突然止められる訳ですので、頭痛や脳の機能低下が発生しやすくなりますし(「ダイエットで脳が壊れる? 危険な“負の連鎖”」)、本来、各種の潤滑油としての役割も果たす脂質や、体の構成要素であるタンパク質までもが、エネルギー源として使われてしまうことになるので、文字通り、「身体を切り崩す」ダイエットとなります。
ただ、ダイエットというのは、基本的にはそういうものです。
「健康なダイエット」というのは、「白い黒」というくらい、矛盾したフレーズなのです(後述します)。
「カロリー」の数字も、あてにならない
「低インスリンダイエット」「糖質制限ダイエット」などの新しいダイエット手法に対して、私はダイエットの古典的手法である「カロリー制限ダイエット」をベースとして考えていますが、実際のところ、この「カロリー」自体も怪しいのです。
なぜなら、「食物カロリーの数値」が、あまりアテにならないからです。
食物カロリーというのは、「その食物自身が持っているカロリー(熱量)」にすぎず、それが「自分の体の中で消費されるカロリー」とイコールにはならないのです。
例えば、セロリのように食物繊維の多い食べ物は、消化吸収に大きなエネルギーが必要なので、実質的なカロリーはごくわずかになります。
しかし、人には個体差があって、強い胃液や腸液を持っていて、食物繊維をやすやすとぶっ壊すことができる人は、セロリであってもたくさんのエネルギーを取得することができる訳です。
つまり、レストランで食事に表示されているカロリーは、一種の目安であって、実際に体内に摂取されるカロリーは、その人の個体差はもちろん、体調や気分、時間帯によっても変わるということです。
ここまでをまとめますと、「低インスリンダイエット」だろうが「糖質制限ダイエット」だろうが、はたまた「カロリー制限ダイエット」だろうが、つまるところ、それらのダイエットの効果を比較する方法は、ないということです。
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