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高品質の単結晶Siを低コストで、新製造法を開発:発電コスト、14円/kWhに向けて前進(2/2 ページ)
東北大学金属材料研究所の教授を務める藤原航三氏らによる研究チームは、高品質の単結晶シリコン(Si)を低コストで製造できる技術「LCZ法」を開発した。2020年の発電コスト目標として掲げられている14円/kWhを実現する技術の1つになるとみられている。
量産化に向けた製造技術の開発へ
研究チームは、今回開発したLCZ法と、従来のMCZ法あるいはCZ法で製造された市販の単結晶シリコンについて、それぞれ結晶品質を定量的に評価できるライフタイムを測定し比較した。この数値が高いほど品質が高いことになるが、測定結果からLCZ法で製造した単結晶シリコンの特性が明らかに優れていることが分かったという。
また、結晶成長を行った後のるつぼ断面の観察も行っている。観察したのは結晶製造直前の融液となる、るつぼの境界部分だ。石英るつぼは融液と反応し、石英が溶解して肉薄となった。これに対して、溌液るつぼは、溌液層の厚みがほとんど変化しておらず、外部から磁場を作用させなくても、高い品質の単結晶シリコンを製造できることが分かった。
研究チームは、今後も溌液るつぼや結晶成長技術の改良を行っていくと同時に、より高品質な結晶シリコンの量産化に向けた製造技術の開発に取り組む。これによって太陽電池のコスト低減を図り、2020年の発電コスト目標として掲げられている14円/kWhの達成に寄与していく考えだ。
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