半導体レーザーでマイクロキャパシター作製:静電容量も従来比2倍以上に
東北大学は2016年1月26日、青紫色半導体レーザーを用いて高分子フィルム上に微細なカーボン電極構造を直接描画することで、平面構造で高性能なフレキシブルマイクロスーパーキャパシターを実現したと発表した。同大学では、「安価なカーボン材料による平面型スーパーキャパシターとしては世界最高の静電容量を有する」としている。
青紫色レーザーで直接描画
東北大学多元物質科学研究所の准教授 渡辺明氏と助教 蔡金光氏のグループが開発した平面型マイクロスーパーキャパシター(電気二重層キャパシター)は、小型で低コスト、高エネルギー効率な青紫色半導体レーザーを用いた描画によって、フレキシブルな高分子フィルム平面上に集積化して形成できる。そのため、「今後ウェアラブル・フレキシブル電子デバイスなどの電源用途としての応用が期待される」(東北大)という。
スーパーキャパシターは、通常、2つの電極による積層構造となるが、平面型では、2つの微細なくし形の電極が、平面上で向かい合った構造となる。そのため、積層型の従来スーパーキャパシターよりも平面型は、薄く、フレキシブルで、同一平面内に多数の微細なキャパシターを集積できる特長を持つ。
平面型スーパーキャパシターの作製は、これまで感光性の材料を用いたフォトリソグラフィー法が用いられてきた。ただ、フォトリソグラフィー法は、複数の製造プロセスを必要となる。
それに対し、渡辺氏/蔡氏のグループが採用したレーザー直接描画法は、レーザー光を照射した場所に対し、選択的に一段階でカーボン電極構造を形成できる。そのため、平面型スーパーキャパシタの低コスト量産技術構築につながる技術として期待されている。
半導体レーザーで描画装置を小型化
レーザー直接描画法を用いる場合、これまでは炭酸ガスレーザーなど比較的大掛かりな装置が必要になった。これに対し、同グループは、より小型でエネルギー消費の少ないレーザー描画装置の開発を行ってきた。
その中で、今回、数センチ角という比較的小さな青紫色半導体レーザー(発振波長405nm)を用いたレーザー直接描画装置を新たに開発し適用。フレキシブルなポリイミドフィルム上へのマイクロキャパシタ構造の形成条件を最適化して、35mF/cm2の静電容量を持つ平面型マイクロスーパーキャパシターを実現した。35mF/cm2という静電容量は「従来までの最高値の2倍以上」(東北大)という。
短波長光で、カーボン層の表面積拡大?
性能が向上した理由について東北大は「炭酸ガスレーザー光は10μm付近の赤外線であるのに対し、青紫色半導体レーザー光は405nmとより短波長の光であり、レーザー光を照射するポリイミドフィルムでの吸収効率が高いことが挙げられる」と説明。より短波長の光により、特異な多孔質構造で表面積の大きなカーボン層が形成され、スーパーキャパシターの静電容量の向上につながったとみられている。
東北大では、「青紫色レーザーによる平面型マイクロスーパーキャパシターの研究をさらに進めており、より高い特性が得られる可能性が示されている」としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- アルミ電解コンデンサと同等性能で体積は1000分の1! 超小型のカーボンナノチューブ応用キャパシタ
産業技術総合研究所のナノチューブ実用化研究センターは、電極材料に単層カーボンナノチューブ(CNT)を利用した超小型のキャパシタを開発したと発表した。アルミ電解コンデンサと同等の性能を持ちながら体積は1000分の1になるという。 - リチウムイオンキャパシタ、ラミネートタイプを展示
太陽誘電は、ラミネートタイプのリチウムイオンキャパシタや、車載用LEDドライブユニット、最大出力が1kWで効率が92%と極めて高い充電器などの試作品を、「人とくるまのテクノロジー展2014」で展示した。 - コンデンサを進化させる意外な新材料とは?
2015年のエレクトロニクス業界のニュースを“クイズ”で振り返る年末企画! 今回は、コンデンサを進化させる可能性のある意外な材料についてです。 - 第1部 動向、なぜキャパシタなのか
キャパシタは電池とは異なる原理で電気エネルギーを蓄積する。電池に比べて寿命が長く、使用環境の制限が少ない。大容量キャパシタの用途は今後3種類に分かれる。まず、瞬間的に大電力が必要な用途、次に、二次電池と大容量キャパシタを組み合わせてそれぞれの欠点を補い合う用途、最後に二次電池の代替だ。