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必要ならばデグレードも、中国メーカーの柔軟さ製品分解で探るアジアの新トレンド(5)(3/3 ページ)

今回焦点を当てるのはBaidu(百度)である。“中国のGoogle”とも呼ばれる同社の製品では、ネットワークメディアプレーヤー「影棒」が話題だ。その影棒を分解し、チップの性能を見てみると、中国メーカーの臨機応変さが浮かび上がってくる。

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デグレードされているプロセッサ

 図3は影棒3のメイン基板の様子である。ボードコンピュータのインタフェースとしてLAN端子、HDMI、USBを備えている。またWi-Fi通信機能(図面左下の金属シールド部。内部は台湾Realtek Semiconductorのチップ)も搭載している。

メイン基板の様子
図3 メイン基板の様子(クリックで拡大)

 メインプロセッサはAmlogicの「S802-B」だ。採用されているのは若干仕様の古い32ビットチップである。

 Amlogicは既に次の世代のチップを続々とリリースしていて、「S905」「T866」「S805」などが市場に出回っている。最新のハイエンドチップはS905で、CPUはARMの64ビット「Cortex-A53」のクアッドコア、GPUはARMの「Mali-450」のペンタコア(5コア)で、4K/60fps(フレーム/秒)の動画に対応し、28nmプロセスで製造されている。

 S905は影棒3と同様のTV BOXコンピュータに採用される。中国では数多くのTV BOXに採用されており、現在、テカナリエでチップを開封調査中である。

 通常、プロセッサは新製品化を行う上で(もしくはある程度の時間が経過したので新バージョンを出す場合)、CPU/GPU性能をアップグレードする。しかしAmlogicのチップは、一部はアップグレードされているが、仕様としてはむしろデグレードされている。

 具体的には、こうだ。

S802-B=CPU:Cortex-A9 クアッドコア/GPU:Mali-450 MP8(8コア)

S805=CPU:Cortex-A5 クアッドコア/GPU:Mali-450 MP2(2コア)

S905=CPU:Cortex-A53 クアッドコア/GPU:Mali-450 MP5(5コア)

 CPUはクアッドコアなので、若干の差こそあれど大きな性能差はない(Cortex-A53はOSの64ビット化での対応)。しかしGPUについては、同じバージョンのARM Mali-450を使いながらもMPコアの数を減少させている。S802では8コアだったが、最新のS905では5コアに減っているのだ。

 実際のユースケースなどを見て、MPコア数を減少させたのかもしれない。Amlogicのチップのコア数が減っている理由は定かではないが、一般的にいえば、チップが新しくなって仕様がデグレードされるケースはほとんど見かけない。なお、同じプロセス世代の28nmを用いるS802-BとS905は異なる工場の28nmを使っている。この辺りについては、S905チップ開封後に本シリーズの中で違いを明確にしていきたい。

 新製品で機能を落とし、平然と別の工場に移っていくような臨機応変さは、中国系チップメーカーの特徴の一つとして捉えておく必要がある。これは実際には驚異的なことなのである。

執筆:株式会社テカナリエ

 “Technology” “analyze” “everything“を組み合わせた造語を会社名とする。あらゆるものを分解してシステム構造やトレンドなどを解説するテカナリエレポートを毎週2レポート発行する。会社メンバーは長年に渡る半導体の開発・設計を経験に持ち、マーケット活動なども豊富。チップの解説から設計コンサルタントまでを行う。

 百聞は一見にしかずをモットーに年間300製品を分解、データに基づいた市場理解を推し進めている。


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