ルネサス、構造改革局面を脱せず――遠のく成長:6インチラインの追加整理も(3/3 ページ)
ルネサス エレクトロニクスは2016年5月11日、2015年度(2016年3月期)決算と、構造改革策である「変革プラン」の進捗(しんちょく)状況について説明を行った。
数値目標達成へさらなる構造改革
こうした課題に直面し、「2016年度、粗利率45%、営業利益率2桁パーセント」という目標達成は微妙になってきた。
その中で、これら課題に対応し、さらなる利益改善に向けた追加施策を実施する。
具体的には、「さらなる選択と集中の加速」を掲げ、全売上高9%相当分残っている非注力製品からの撤退を継続しつつ、懸案の採算割れ製品の粗利率改善に向けた対応を実施し、利益確保に動く。さらには、生産構造改革で追加施策を実施する。鶴丸氏は「最適な生産体制に向けて、まだやり残しがあり、(製造ラインのウエハーサイズを)6インチから8インチ、12インチへシフトさせる必要がある」と表明。「6インチ拠点について再編を含めたあらゆる可能性を震災対応にメドが付いた時点で検討する。そして顧客とも十分なリードタイムを設けながら、計画を進める」と語った。
これら施策により、鶴丸氏は「2016年度、粗利率45%、営業利益率2桁パーセントの達成を目指す」と変革プランの完遂を重視する姿勢を強調した。
成長へのギアチェンジは遅れるばかり
1年前、作田氏は「構造改革に一定のメドがつき、成長に向けてギアチェンジするため」と遠藤氏に会長兼CEO職をバトンタッチし、売り上げ増を伴う成長路線へとかじを切った(関連記事:焦りは禁物、でも大胆に――ルネサスの成長を託された遠藤新会長が会見)。しかし、その遠藤氏は2015年12月に辞任。新たに社長兼CEOに元カルソニックカンセイ社長/日本電産副社長の呉文精氏を招聘(しょうへい)することが決まっているものの、成長路線へのシフトチェンジは遅れていると言わざるを得ない。この日の決算説明会でも、売り上げ増に向けた施策の説明は、注力分野への研究開発費投入を増やしていること以外、具体的なものはなかった。
2016年度も「非注力事業からの撤退影響により売り上げ面は厳しい」(柴田氏)と売り上げ減傾向はしばらく続く見通しで、成長へのメドは付いていない――。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ルネサス、5年前の教訓生かした震災対策「成果出た」
ルネサス エレクトロニクス社長兼CEOを務める鶴丸哲哉氏は2016年5月11日、熊本地震で被災した熊本地区製造拠点の復旧作業状況について説明を行った。 - ルネサスCEOに元カルソニックカンセイ社長の呉氏
ルネサス エレクトロニクスは2016年4月15日、代表取締役社長兼CEO(最高経営責任者)に元カルソニックカンセイ社長、日本電産副社長を務めた呉文精氏が就任すると発表した。 - ルネサス 遠藤会長兼CEOが辞任
ルネサス エレクトロニクスは2015年12月25日、代表取締役会長兼CEOである遠藤隆雄氏が辞任したと発表した。 - 「ルネサスの社員は当事者意識が低い」――作田氏がルネサス変革プランを説明
ルネサス エレクトロニクスは2013年10月30日、都内で2013年度(2014年3月期)第2四半期決算説明会を開催し、同日発表した「変革プラン」について最高経営責任者(CEO)兼会長の作田久男氏が説明を行った。「ルネサスの社員は当事者意識が低い」「ルネサスは市場/顧客から離れかけている」「(注力事業への)集中が下手くそ」など歯に衣(きぬ)着せぬ表現でルネサスの問題点をはっきりと挙げ、それらの問題を解決していく姿勢を打ち出した。 - ルネサス作田会長「無事、取りあえず生き残れた」――成長は後任に委ねる
ルネサス エレクトロニクスの会長兼CEOを2015年6月に退任することを表明している作田久男氏。2014年度決算説明会席上で、ルネサス再建の陣頭指揮を採った過去2年間を振り返った。