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磁気記憶の高密度化とその課題福田昭のストレージ通信(28) 次世代メモリ、STT-MRAMの基礎(6)(2/2 ページ)

磁気記憶の高密度化手法と、高密度化に伴う本質的な課題を解説する。磁気記憶は、高密度化と低消費電力化で矛盾を抱える――。

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10nm以下の磁性体粒子では外部磁界による磁化反転が困難に

 それでは現実に、磁気記憶の定量的な仕様はどのようになるのだろうか。熱エネルギーによる磁化反転の確率を10年間で10億分の1(10−9)以下とする。すると、磁気異方性エネルギーΔEは、kBTの約60倍以上に保たなければならない。

 磁性体粒子の寸法と形状には、直径5.4nm×厚み2nmの微小な円板を考える。材料は鉄(Fe)とプラチナ(Pt)の合金である。


微小な磁性体粒子への磁気記憶のモデル (クリックで拡大) 出典:CNRS

 このような磁性体粒子で外部磁界によって磁化反転を起こそうとすると、極めて強い磁界を必要とする。その強さは12テスラ(Teslas)である。磁気メモリ(MRAM)やハードディスク装置(HDD)などでは、非現実的な大きさの電磁石が必要になってしまう強さだ。


微小な磁性体円板で磁化反転を起こすために必要な外部磁界 (クリックで拡大) 出典:CNRS

 ここから分かるのは、10nm以下のサイズではもはや、外部磁界によって磁化反転を起こすことは不可能に近いことである。磁化反転については本シリーズの今後の回で説明しよう。

(次回に続く)

⇒「福田昭のストレージ通信」連載バックナンバー一覧

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