DRAM、過酷な温度環境への対応で生き残る:差異化は難しくても(2/2 ページ)
3D NAND型フラッシュメモリや次世代不揮発性メモリの開発が進む中、DRAMはどのような方向に発展していくのだろうか。米Virtiumは、過酷な稼働環境への対応がその1つだと述べる。
過酷な環境での稼働
また同氏は、「当社としては、熱への対処や、空気の流れが少ない環境への対応が可能なモジュールを実現することにより、さまざまな用途への要望に対応していきたい考えだ。例えば、ATMなどが挙げられる。当社の最新モジュールは、オプションとしてコンフォーマルコーティングを用意している。特にネットワーク環境の末端では、極端な高温/低温といった温度だけでなく、湿度も問題となるためだ」と述べている。
DDR4への移行
さらに同氏は、「SRAMは特定の用途向けにメリットを提供することができ、MRAMはかなりの高速化を実現することが可能だ。当社は、産業分野からのさまざまな要望に対応することができる」と述べる。Virtiumによると、ここ6カ月の間に、速度や電力、密度などの面からDDR4に移行する動きが拡大しているという。
Phillips氏は、「Virtiumのロードマップでは、2016年後半に、現行のULP RDIMM/mini-RDIMMフォームファクタでさらなる高密度を実現した、64GBのDDR4を発表する予定だ」と述べている。
米国の市場調査会社であるObjective Analysisで主席アナリストを務めるJim Handy氏は、「既存および今後のコンピュータは全て、DDR4ベースになるだろう。このため、Virtiumが販売を検討しているシステムが全て、産業分野を問わずDDR4システムであるのも当然のことだ」と述べる。
DRAMは、キャッシングに対応可能なMRAMのような永続性はないが、それでも幅広い用途において最もコスト効率の高い選択肢の1つである。Handy氏は、「DRAMは、どの永続性メモリ(パーシスタント・メモリ)よりもはるかに安価だ」と指摘する。
同氏によると、MRAMの価格は現在、DRAMと比べて約10倍高いという。
Handy氏は、「Virtiumは、同社製品の差異化要因として、小型のフォームファクタを挙げている。しかし、一般的なDIMMと比べて、その差は1mm未満であるため、小型フォームファクタの重要性はそれほど高くはない。もっと大きなメリットとして挙げられるのが、高い信頼性が求められる過酷な環境への対応が可能だという点だ。例えば、通信事業や自動車などのように、特に温度範囲が広く、保護コーティングが必要な場合への対応だ。DRAMには、差異化要因がほとんどない。特に商業温度に対応した製品は、ほぼ汎用品である」と述べている。
【翻訳:田中留美、編集:EE Times Japan】
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