SiCを取り巻く環境、「この2年で変わった」:PCIM Europe 2016(2/2 ページ)
ドイツ・ニュルンベルクで開催されたパワーエレクトロニクスの展示会「PCIM Europe 2016」(2016年5月10〜12日)に出展した米国のUSCi(United Silicon Carbide, inc.)は、SiCパワー半導体に対する認識がここ数年で大きく変わったと語る。
パッケージングはややコスト高
一方で、デメリットとしてはJFETとMOSFETの2つのダイを1パッケージに搭載するので、パッケージングにややコストが掛かることだという。Bendel氏は「確かにSiC-MOSFETへの関心は高いが、当社のSiCカスコードデバイスについて説明すると、エンジニアはその利点をすぐに理解してくれる」と述べた。
USCiは、主に太陽光インバーターや、電気自動車のオンボードチャージャーなどをターゲット市場にするという。「当社は世界市場をターゲットとしているが、この2つはとりわけ中国で市場規模が大きく、重要視している」(Bendel氏)。
この他、シリコンのバイパスダイオードを備えた耐圧650VのSiCを2016年第2四半期に、1700VのSiC-JFETを同第4四半期に発表する予定で、着々と製品ラインアップを拡大している。
なお、日本ではKTLがUSCiの製品を取り扱っている。
SiCへの認識は、この数年で変わった
Bendel氏はSiCパワーデバイス市場について、「SiCパワーデバイスへの認識がここ2年ほどで大きく変わったと感じる」と語る。「2年前は、そもそもSiCパワーデバイスは本当に必要なのか、使えるのか、シリコンでも十分なのではないか、SiCの特性について十分理解しているのか、といった議論がまだ盛んに聞かれた。だが現在は、そういった声はなく、エンジニアたちは実際に設計に採用するという段階になっている」(Bendel氏)。同氏は、コストへの懸念はあるものの、SiCパワーデバイスが“コンセプト”のフェーズから、“実用”のフェーズに確実に移ったと語った。
【取材協力:Mesago PCIM】
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