NEDO、容量5Ah級の革新型蓄電池の実用化に着手:2020年度までに試作、2030年大衆車に搭載へ(2/2 ページ)
NEDOは2016年5月18日、リチウムイオン電池に代わる革新型蓄電池に関する新たな開発プロジェクトを開始したと発表した。2030年にガソリン並みの走行性能を実現する普及価格帯電気自動車を実現するため、産学と連携し、2020年度中までに容量5Ah級の新型蓄電池を試作、検証するという。
容量5Ah級の実セルを試作し検証へ
革新型蓄電池開発としては、既に300Wh/kgのエネルギー密度が検証されている3タイプの電池を対象に、新規解析技術を用いて課題解決を図りながら、エネルギー密度以外にも、耐久性や安全性の課題解決を進め、容量5Ah級の実セルを試作し検証する。
10企業16大学4研究機関体制で
NEDOは、「いずれの研究開発項目も、その目標に向けた難易度が極めて高い」とする。そこで、先端の材料科学、解析技術を持つ大学/公的研究機関や、蓄電池メーカー、自動車メーカーなどとの連携体制を構築。「学のサイエンスと、産のエンジニアリングの知見を融合させることで、技術的なブレークスルーの創出を目指す」という。
既に決定している研究委託先は、次の通り。なお、京都大学が代表機関を務める。
京都大学、産業技術総合研究所、茨城大学、神奈川大学、関西大学、九州大学、高エネルギー加速器研究機構、神戸大学、東京大学、東京工業大学、東京農工大学、東北大学、名古屋工業大学、兵庫県立大学、ファインセラミックスセンター、北海道大学、三重大学、理化学研究所、立命館大学総合科学技術研究機構、早稲田大学、ソニー、トヨタ自動車、豊田中央研究所、日産自動車、パナソニック、日立化成、日立製作所、日立マクセル、本田技術研究所、三菱自動車工業。
NEDOは開発プロジェクトの目標として「実用化の目標時期である2030年までのリードタイムを踏まえると、2020年代前半までに革新型電池の有望な電池タイプ、構成材料を絞り込んで、セルの基本仕様を固め、電池モジュールシステムの開発フェーズに移る必要がある。そのため、(今回の開発プロジェクトの)終了後に企業の実用化開発が可能になるところまで研究フェーズを移行させることを目指す」とコメントしている。
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