NIがミリ波対応ソフトウェア無線、5G研究後押し:「世界初」
日本ナショナルインスツルメンツ(NI)は、Eバンド(71G〜76GHz)の周波数帯に対応し、最大2GHzのリアルタイム帯域幅での送受信が可能な、ミリ波対応ソフトウェア無線システムを発表した。
日本ナショナルインスツルメンツ(NI)は2016年5月25日、「世界初」(同社)となるミリ波対応ソフトウェア無線システムを発表した。同システムは、Eバンド(71G〜76GHz)の周波数帯に対応し、最大2GHzのリアルタイム帯域幅での送受信が可能なトランシーバーシステムとなっている。
現行のソフトウェア無線は、6GHz未満の帯域を使用してきた。現在、多くの企業が5G(第5世代移動通信)の中核技術として、ミリ波の研究に取り組んでいる。今回発表したシステムは、5G研究の取り組みを後押しするものとなっているという。
カスタマイズ性を大幅に向上
同システムは、新しいPXI Expressモジュールが複数含まれている。これらのモジュールを組み合わせることで、ユーザーの端末に対するミリ波アクセスポイントとして使用可能だ。従来よりもカスタマイズ性を高め、ミリ波通信を実現するプロトタイプの開発や、チャンネル測定も1つのシステムでできるとしている。
同システムに含まれるベースバンドソフトウェアが、チャンネル符号化を含むミリ波通信システムの物理層として機能する。ベースバンドソフトウェアのコードは、NIの開発環境「NI LabVIEW」のプログラムで提供される。これにより、同社は「システム統合の作業負荷が軽減され、開発期間を短くできる」とした。
Nokiaは、NIのRF/Communications Lead Userプログラムの主要参加企業として、5G研究活動に同システムの初期版を利用している。Nokiaベル研究所でモバイル無線研究統括を行うTod Sizer氏は、「『Brooklyn 5G Summit 2016』では同システムを利用し、60GHzで動作するフェーズドアレイを用いた高データレートのミリ波システムを披露した。これは、5Gの商用化が可能であることを実証するものとなる」と語る。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 着々と進む5G標準化
2020年の商用化スタートに向けて、5G(第5世代移動通信)の規格化が進んでいる。世界各地での協力体制が、これまでよりも必要になりそうだ。 - 自動車業界にとって5Gとは何か(前編)
5G(第5世代移動通信)の要件の1つに、1ミリ秒以下の遅延がある。こうした低遅延によって、5Gは自動車にも採用できると期待されている。では、自動車業界は、本当のところ5Gをどう捉えているのだろうか。 - 5GはIoT制御のための移動通信だ
ドレスデン工科大学の教授で“5G Man”との異名をとるFrank Fitzek氏に単独インタビューした。同氏は「5G(第5世代移動通信)は、IoT(モノのインターネット)を制御することだけが目標」とし遅延を1ミリ秒以内に抑えることの重要性を説いた。 - 5Gの商用化は2022年以降、けん引役はIoTに
Telecommunications Industry Association(TIA)は、世界中の通信事業者58社を対象に、5G(第5世代移動通信)について調査を行った。多くの通信事業者が、5Gでは「完全な商用化は2022年以降」「けん引役はIoT」「開発と導入ではアジアがリード」と考えていることが明らかになった。