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メイドたちよ、“意識高い系”を現実世界に引き戻してやれ!江端さんのDIY奮闘記 EtherCATでホームセキュリティシステムを作る(最終回)(5/11 ページ)

「ご主人様とメイド」の例えで産業用ネットワーク「EtherCAT」の世界を紹介してきた本連載も、いよいよ最終回です。今回も、前回に引き続いて、EtherCATを開発したベッコフとEtherCAT Technology Groupの方々へのインタビューの模様をご紹介しつつ、「EtherCAT」への熱い想いで締めくくります。

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Q:EtherCATのリアルタイム性って、絶対に守らなければならないですか?

江端 EtherCATの仕様って、リアルタイムだけはメチャクチャに厳しいですよね。ロボットやモーターのような「モーション系」ならともかく、スイッチの切り替えとか、センサー情報の収集などの「I/O系」くらいならリアルタイムでなくったって、問題にならないと思うんですよ。

 実際に、江端家のホームセキュリティシステムでは、全く問題ありません。

 また、我が家のPCで使っている、フリーのオープンマスターである、SOEM(Simple Open EtherCAT Master)も、かなりいいかげんなリアルタイムで動いています。

 しかし、ベッコフが販売しているPCでマスタを実現するソフトウェアTwinCAT3は、リアルタイム性に、めちゃくちゃ厳しいです。

 リアルタイム性能を発揮できないPCとイーサネットNICの組み合せでは、ピクリとも動いてくれません(参考記事)。

江端 EtherCATって、リアルタム性にこだわりすぎて、逆にビジネスチャンスを失っていませんか?

 私は、EtherCATをPCの外部I/Oとして、すごく簡単に使えるようなものにしたいのです。どのくらい簡単かというと、小学生の子どもが、夏の自由研究で、PCを使って、家中の温度を自動計測し、PCで、ラジコンカーを動かすことができるくらい、です。

小幡さん 江端さんのおっしゃることも分かるんですが、EtherCATのリアルタイム性は、EtherCATをEtherCAT足らしめている絶対的な条件なのです。私たちは、リアルタイム性を欠くいかなるモノも「EtherCAT」と名乗ることを許しません。

 なんか、小幡さん、怖い。

川野さん リアルタイム性は、制御系システムの根幹です。EtherCATが制御LANとして、これかも生き続けていくためには、そこにわずかの「ブレ」もあってはなりません。なぜなら、EtherCATの品質や信用に関わってくるからです。

江端 うーん、「恋愛をしないこと」を加入の条件としている、アイドルグループみたいなものですか。

川野さん EtherCATは、後発の新人アイドルグループで、工場のラインを運用管理されるファン(お客さん)に支えられています。まずは、今のファンの皆さんを、第1に考えなければなりません。

 確かに、「このグループのアイドル達(スレーブ)だけは、絶対に約束を(リアルタイム性を)守る/守らせる」という安心感は絶大かもしれません。

川野さん それに、ハンス(ベッコフ社長)自身が、ガチなエンジニアなんですよ。ある時、あるエンジニアが、ハンスに、マスタに二重化機能*2)を実装したいといったら、

「『切り替え中に、たった1つのパケロス(通信中にEtherCATフレームを取り損うこと)も許さない』――これが実装の条件だ。これができなれけば、EtherCATのマスタ二重化とは呼ばせない」

と言ったそうなんです。

*2)2つのマスタを用意しておき、一方が故障した時に、もう1つに切り替えて、システム停止を防ぐ機能。

江端 1秒間に最大8000個*3)の1500バイトのフレームが流れ続けるEtherCATのマスタ切り替え時に、パケロスゼロ? それは「ムリ」というより「ムチャ」です。

*3)実際は80000個まで対応可能です(詳しくは後述)。

 実は、私は、以前、二重系システムの通信ミドルウェアの開発にも携わっていたため、このハンス・ベッコフさんの要求仕様の高さを一瞬で理解できたのです。

川野さん 営業部隊が、ハンスに「8割のお客はパケロスしても構わないと言ってくれています」と、どんなに説得しても、ハンスは、絶対に、絶対にO.K.を出さないのです。

江端 揺らぎないですねー。そこまでくると、信念を超えて、美学とすら感じます。

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