GLOBALFOUNDRIES、22nm以降のFD-SOI開発に着手:最先端ICではFinFETが主流だが
GLOBALFOUNDRIESは、22nmプロセスを用いたFD-SOIのプラットフォーム「22FDX」の後継プラットフォームを開発中だという。とはいえ、最先端ICの世界では、FinFETが主流だ。GLOBALFOUNDRIESは、アナログ/RF回路ではFinFETよりもFD-SOIが適していると、FinFETに比べた時の利点を主張する。
GLOBALFOUNDRIESが開発した「22FDX FD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレーター、以下22FDX)」プロセスは2016年中にお目見えする予定だが、同社で最高技術責任者(CTO)を務めるGary Patton氏によると、同社は現在後継のプロセスを開発中だという。
22FDXは、4種類のプロセスから成る22nm FD-SOIのプラットフォームだ。GLOBALFOUNDRIESは、「22FDXは、プレーナ型CMOSプロセスと同等のコストで、FinFETと同等の性能とエネルギー効率を実現できる」と主張している。バックバイアスにより、性能から最小リーク電流に至るまで、トランジスタの動作を大幅に変える機会になるとしている。ちなみにSamsung Electronicsは、28nm FD-SOIプロセスを提供している。
主流はFinFET
とはいえ、FinFETの製造は、GLOBALFOUNDRIESを含むファウンドリーをはじめ、IP(Intellectual Property)プロバイダーなどにとって、最先端ICの主要なオプションとなっている。
Patton氏はかつてIBMで研究員として長く働いていたが、GLOBALFOUNDRIESがIBMの半導体事業を買収した際にGLOBALFOUNDRIESに移った。
Patton氏は2016年5月24〜25日にベルギー・ブリュッセルで開催された「IMEC Technology Forum」の会場で、EE Times Europeに対し「われわれは、FinFETとFD-SOIの両方がモバイル分野に最適だと考えていた。米国ニューヨーク州マルタで開発を始め、その後拠点をドイツ・ドレスデンに移した。生産量は当初の計画を上回っている他、設計IPにも注力している」と語った。
GLOBALFOUNDRIESは、半導体IPを提供する米国Invecasとともに、14nm FinFETおよび22nm FD-SOIの製造プロセスに用いる基盤IPの開発に取り組んでいる。GLOBALFOUNDRIESは22FDXの顧客向けのリスク生産を2016年末に開始した後、2017年には量産に着手する計画だという。
Patton氏は、「高い電流駆動力を備えたFinFETプロセスは、性能の保持が求められる大規模チップには適している。一方で、電力消費量が重視される小型チップにはFD-SOIが、よりよい選択肢になる」と述べる。加えて、FinFETではフィンの数を1つか2つあるいはそれ以上選ばなくてはならず、アナログやRF回路には向かない、とも説明した。
アナログ、RF、そしてデジタルにも
GLOBALFOUNDRIESはこれまで、22FDXの長所はIoT(モノのインターネット)で用いるアナログおよびRF回路に適していると主張してきたが、Patton氏は同プロセスがデジタル回路の要件にも応えるとしている。同氏は「モバイル分野には、65nmや40nmプロセスにとどまっているデジタル回路が山ほどある。そうしたプロセスからFinFETに移行するコストは、FD-SOIのようなプレーナ型のプロセスに移行するよりも高い」と主張する。
難しい局面を迎えているFD-SOI
もともとIBMによって研究されていたFD-SOIは、STMicroelectronicsが支持し、その後GLOBALFOUNDRIESとSamsungもFD-SOIの開発に着手している。だが、FD-SOIは難しい局面を迎えている。STMicroelectronicsとGLOBALFOUNDRIESが、ドレスデンでFD-SOIの製造を行うと発表してから、既に4年が経過している。FD-SOIが、16nm/10nm FinFETプロセスと渡り合うには、ロードマップが欠けていて、それが不利な点だとみなされている。
【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】
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