逆構造用いたOLED、赤色で1万時間以上の寿命実現:大型シートディスプレイの実現へ大きく前進
NHK放送技術研究所は、2016年5月26〜29日に開催した「技研公開2016」で、同年5月24日に発表した、酸素や水分に強く、高寿命化を実現した有機ELデバイスの展示を行った。
NHK放送技術研究所は、2016年5月26〜29日に開催した「技研公開2016」で、日本触媒と共同で開発する有機ELデバイス「iOLED」に関する展示を行った。
同研究は、大型で軽量の8K(スーパーハイビジョン)シート型ディスプレイの要素技術の1つとする。同年5月24日には、酸素や水分に強く、高寿命化を実現した赤色のiOLED開発に成功したと発表している。説明員は、「8Kをより楽しむことができる大型シートディスプレイの実用化に向けた大きな一歩」(説明員)としている。
長い駆動寿命と高い省電力性を両立
一般的な有機ELデバイス(OLED)は、電子注入層にアルカリ金属などの酸化しやすい材料を用いているため、酸素や水分に触れると発光できなくなる。そのため、ガラスなどで封止する必要がある。しかし、シートディスプレイのようなフレキシブルデバイスはフィルム素材を使用するため、大気中の酸素や水分が浸透しやすい。そのため、酸素や水分が浸透しても、有機EL自体が劣化しない材料を用いる必要があるという。
そこで、NHK放送技術研究所と日本触媒は、酸化に強い構造を持つ材料を用いて、一般的なOLEDと逆の構造を持つiOLEDを2013年に開発。しかし、実用化には長い駆動寿命と高い省電力性も両立することを求められた。今回発表したiOLEDでは、新しい電子注入層材料と新添加材を開発。これにより、2013年開発当時の駆動寿命が1000時間以下だったのに対して、一般的なOLEDと同等となる1万時間以上の駆動寿命を実現した。
輝度200cd/m2を得るのに必要な印加電圧も、一般的なOLEDが4.9V、2013年開発当時が3.9Vだったのに対して3.7Vを実現。高い省電力性も両立したとしている。
説明員は、「今回は赤色のみの実現となっているが、緑色/青色iOLEDの研究も加速させていく。2020年までに大型シートディスプレイの実用化を実現したい」と語る。
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