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IBM「Watson」を糖尿病対策へ、アプリの開発もヘルスケア分野への応用に本腰

IBMが、同社のコグニティブコンピュータ技術「Watson」を、本格的にヘルスケア分野に応用する取り組みを始めている。その1つが糖尿病のケアだ。

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「Watson」をヘルスケアの応用に

 研究の場以外でも、ウェアラブル、ヘルスケア、ビッグデータが交わる分野がある。発症する人が増え、最もコストのかかる慢性疾患である糖尿病に苦しむ患者へのケアだ。米国糖尿病学会(ADA)によると、米国では毎年140万人が糖尿病と診断されているという。

 ADAによると、2012年の時点で2900万人が糖尿病と共に生きており、さらに8600万人が前糖尿病状態として知られる症状と診断された。


ADA Medical Innovationでシニアバイスプレジデントを務めるJane Chiang氏(左)と、IBM Watson HealthのKyu Rhee氏 出典:A.J. Sisco/Feature Photo for IBM

 こうした深刻な事態に対処すべく、IBM Watson HealthはADAとの協力の下、ADAの膨大な情報ライブラリとデータの分析に「Watson」のコグニティブコンピューティング能力を適用している。IBM Watson Healthは、IBMがWatsonをヘルスケア向けに応用するために設立した事業部門である。IBMとADAはこの取り組みを通じて、起業家、開発者、医療関係者、患者が、病状の改善や発症の予防に関する知識を得られるよう、促すことを目指す。

 IBMとADAの協業は、米国ルイジアナ州ニューオーリンズで開催された定例イベント「American Diabetes Association 76th Scientific Sessions」(2016年6月10〜14日)で発表された。この協業は、糖尿病の研究とケアを向上することを目的としてIBMが発表した取り組みの1つである。

 IBM Watson HealthでCHO(Chief Health Officer:最高健康責任者)を務める医師のKyu Rhee氏によると、Watsonは、糖尿病に関して入手可能なあらゆる文献やリソースを取り込む。医学雑誌や医学書、米国国立医学図書館の国立生物化学情報センターが運営する学術文献検索システム「PubMed」で入手できる文献、ADAのDiabetes Information Centerが所有する全コンテンツが情報収集の対象となる。

 Rhee氏は、2016年6月12日に投稿したブログの中で、「IBMはADAとの協力の下、ADAが所有する他に例を見ないほど豊富な臨床・研究データに、Watsonのコグニティブコンピューティング能力を適用することに取り組む。ADAはそれらのデータを66年にわたり蓄積してきた」と語った。

 Rhee氏はブログの中で、Watsonは糖尿病データを理解することで、潜在的な危険因子を特定し、医療上の判断に適用できる根拠に基づいた洞察を生み出すよう学習する、と述べた。

糖尿病アプリの開発

 一方、IBMは糖尿病と戦いにおける特定のパートナーとの取り組みに関する最新情報も明らかにした。そのようなパートナーの1つとしてMedtronicがある。MedtronicとIBMは「SugarWise」と呼ばれるコグニティブアプリの開発に取り組んでいて、その開発は既に最終段階にある。同アプリの最初のバージョンは、患者のインスリン分泌を過去にさかのぼって分析したり、グルコースのレベルを常時モニタリングしたりできるという。

 また、デジタルヘルスケアの新興企業であるHelpAroundとは、糖尿病サポートコミュニティーなどで患者から寄せられる質問やリクエストをリアルタイムで分析するために、WatsonのAPI(Application Programming Interface)を開発している。

【翻訳:青山麻由子、編集:EE Times Japan】

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