標準化進むセルラーIoT、モジュールは低価格に:IoT機器がスマホを上回る時代に備えて(2/3 ページ)
IoT(モノのインターネット)機器をモバイルネットワークに接続する「セルラーIoT」の標準化が進んでいる。エリクソン・ジャパンは2016年6月16日に横浜市で記者説明会を開催し、セルラーIoTの技術解説やデモを行った。
LTEモジュールを、より低コストにする工夫とは
セルラーIoTが標準化されている背景には、消費電力の低下とカバレッジの拡張に加え、LTEモジュールのコスト削減を図るという狙いがある。そのため、セルラーIoTでは、回路を簡略化できるような技術が随所に盛り込まれている。吉田氏によれば、現在、LTE Cat-4向けモジュールの単価は35〜50米ドルだという。LTE Cat-MやNB-IoTでは、これが5〜10米ドル程度になるのではないかとみられている。セルラーIoTの普及が進めば、さらに低コストになる可能性もある。
LTE Cat-0では、「LTE Cat-1」以上では2本必要だった受信アンテナが、1本で済むようになっている。最大通信速度は1Mビット/秒(Mbps)に制限され、上りか下り、どちらかしか通信できない半二重通信方式も採用された。同方式では、送受信回路で共通の発振器を使えるのでデュプレクサーが不要になるという、回路設計上の利点がある。なお、エリクソン・ジャパンのCTO(最高技術責任者)を務める藤岡雅宣氏によると、アンテナが1本になることで受信品質が多少なりとも劣化するので、パワーブーストなどの技術で補う必要があるという。
LTE Cat-0をさらに簡略化したLTE Cat-M1では、最大通信速度は1Mbpsと変わらないが、帯域幅を1.4MHzに制限し、「拡張DRX(Discontinuous Reception)」と呼ばれる機能を採用している。データを受信する周期を最大44分程度まで長くできる仕組みだ。既存のDRXは、この周期が2.5秒程度だった。
NB-IoTでは、上りの通信速度が最大62kビット/秒(kbps)と、さらにピークレートが抑えられている。帯域幅は200kHzに制限されていて、半二重通信方式のみが用いられる。このようにピークレートが低いと、メモリサイズを削減できるというメリットがある。NB-IoTの運用としては、2G(第2世代移動通信)であるGSM(Global System for Mobile communications)で使用していた帯域の“跡地”を利用する他、隣接するLTE帯域の間(ガードバンド)を使用したり、LTEの帯域内で、LTEとともに運用したりする方法が考えられる。
なお、LTE Cat-M1の次の規格となる「LTE Cat-M2」(仮称)の議論がRelease 14で行われるとみられている。そうなると、セルラーIoTの規格は断片化が進み、すみ分けしにくくなる印象を受ける。これについて藤岡氏は、スマートメーターなど移動しない状態で使うものにはNB-IoTを、移動しながら使うものにはLTE Cat-M1やLTE Cat-M2を使うといったすみ分けが考えられると述べた。
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