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希少元素を使わない赤く光る窒化物半導体を発見発光デバイスや太陽電池への応用期待

東京工業大学と京都大学の共同研究チームは2016年6月、希少元素を使わずに、赤色発光デバイスや太陽電池に応用できる新たな窒化物半導体を発見、合成したと発表した。

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CaZn2N2

 東京工業大学と京都大学の共同研究チームは2016年6月22日、技術的、経済的に抽出が困難な元素(希少元素)を使わずに、赤色発光デバイスや太陽電池に応用できる新たな窒化物半導体を発見した発表した。新半導体発見には先端計算科学を用いた物質開拓手法(マテリアルズ・インフォマティクス)を用いたとし、同手法により「物質探索を加速できることも実証した」(研究チーム)とする。

バンドギャップ理論予測値1.8eV

 新たに発見した窒化物半導体は、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、窒素(N)という豊富な元素のみで構成されるCaZn2N2だ。発光や吸光に適した直接遷移型バンド構造*)を持ち、バンドギャップの理論値は赤色発光が期待できる1.8eV(電子ボルト)。SrZn2N2、CaMg2N2などの類縁窒化物との固溶体化により、バンドギャップを1.6〜3.3eVの範囲で制御できる特長を持つ。

*)直接遷移型バンド構造:価電子帯の上端と伝導帯の下端の電子状態が同じ波数ベクトルを持つ半導体のバンド構造。


計算で導き出したCaZn2N2の結晶構造と特性の予測 (クリックで拡大) 出典:東京工業大学

 CaZn2N2の電子の有効質量は電子静止質量の0.2倍、重い正孔の有効質量は0.9倍と小さく、電子や正孔の輸送に有利な性質を持つ。なお、窒化ガリウム(GaN)の電子の有効質量は電子静止質量の0.2倍、重い正孔の有効質量は2.0倍であり、「(GaNと比べても)優れた値である」(研究チーム)とする。

 さらに、p型とn型の両方にキャリアの制御ができ、シリコン(Si)やヒ化ガリウム(GaAs)のような既存の半導体と同様なデバイス構造が利用できるという特徴も持ち合わせる。

高圧合成し、赤色発光を確認

 研究チームは、先端計算科学を用いたスクリーニングなどで「合成の報告すらない新物質」というCaZn2N2を見いだし、実際に合成を実施。合成方法は、計算によりCaZn2N2が高い窒素分圧下において安定であると見込まれ、高圧合成を採用した。

 その結果、1200℃、5.0GPa(約5万気圧)の高温、高圧条件下において、CaZn2N2相が得られ、「その結晶構造は(事前に計算で)予測されたものと等しかった」とする。拡散反射測定とフォトルミネッセンス測定により、バンドギャップは1.9eVと理論予測にほぼ一致する値に見積もられ、直接遷移型のバンド構造を示唆する急峻(きゅうしゅん)な光吸収スペクトルの立ち上がりと赤色発光を観測したとする。


高圧合成により得られたCaZn2N2試料のX線回折パターン、吸収スペクトル、フォトルミネッセンススペクトルおよび赤色発光の写真 (クリックで拡大) 出典:東京工業大学

 研究チームでは、「現在実用化されている窒化物半導体は、緑色や青色、紫外線の発光ダイオードに用いられるGaNと、窒化インジウムまたは窒化アルミニウムとの固溶体にほぼ限定されている。また、既存の赤色や黄色の発光ダイオードには、高コスト、希少、あるいは使い捨てや廃棄が容易でない元素が使用されている」と指摘。そうした中で、希少元素を使わずに有用な光の波長領域のバンドギャップを持つCaZn2N2により「赤色の発光デバイスや太陽電池など、窒化物半導体のこれからの応用の可能性を広げる」としている。なお、研究チームは、計算スクリーニングにより、CaZn2N2以外にも、10種類の新3元系窒化物に関する理論予測を導き出している。

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