白金抵抗温度計、1000℃付近でも高精度に測定:ウエハー熱処理工程を0.001℃精度で温度管理
産業技術総合研究所(産総研)とチノーは、1000℃付近の高温域において温度を高精度に測定できる白金抵抗温度計を共同で開発した。
白金線に熱処理、センサー構造を最適化
産業技術総合研究所(産総研)物理計測標準研究部門 温度標準研究グループのウィディアトモ・ジャヌアリウス主任研究員とチノーは2016年6月、1000℃付近の高温域において温度を高精度に測定できる白金抵抗温度計を共同で開発したと発表した。シリコンウエハーの熱処理工程などで、精度の高い温度制御/管理が可能となる。
半導体製造工程など高温域で高精度な温度測定には、センサー部に白金線を用いた白金抵抗温度計が用いられる。ところが、1000℃程度の高温域では、白金線の抵抗値が不安定であった。その上、高温によって白金線に熱ひずみが生じ、測定精度に影響を与えることもあった。
研究チームは今回、市販されている従来の白金抵抗温度計を複数個用意した。この白金抵抗温度計に適度な熱処理を施した。また、センサー部の白金線に生じる熱ひずみを低減できるよう、白金線を保持する構造を新たに考案/採用した。
その上で国家標準の「水の三重点装置」と「銀の凝固点装置」を用いた熱サイクル試験を行い、試作した白金抵抗温度計について、各温度の抵抗値を測定した。この結果から、センサーの作製過程で適度な熱処理を施すことで、1000℃付近での抵抗値の変化を最小に抑えることが可能となり、安定した温度計を作製できることが分かった。
研究チームは、従来型白金抵抗温度計と今回試作した白金抵抗温度計を用いて熱サイクル試験を行い、測定した結果を比較した。従来型の温度計は、熱サイクルを加えるごとに961.78℃における抵抗値が増加傾向となり、4回目の試験では抵抗値の変動が約0.01℃となった。
これに対して、試作した白金抵抗温度計は抵抗変化が±0.001℃と安定。0.01℃での抵抗値の変化も±0.0005℃と安定していることが分かった。この結果から、開発した白金抵抗温度計を用いると、1000℃付近の高温域においても高精度の温度測定が可能であることを確認した。
今回の研究成果は、ポーランドで開催される国際学会「TEMPMEKO 2016」(2016年6月27日〜7月1日)において、その詳細を発表する。
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