IoT機器向けエコシステムを完成――サイプレス:BroadcomのIoT事業買収で
Cypress Semiconductorは2016年7月5日(米国時間)、BroadcomのIoT(モノのインターネット)事業の買収を完了したと発表した。これに合わせて、Cypressの日本法人である日本サイプレスは7月6日に記者説明会を行った。
無線技術、開発チーム、売上高も丸ごとCypressに
Cypress Semiconductorは2016年4月に、BroadcomのIoT(モノのインターネット)事業を買収すると発表していた。買収額は5億5000万米ドル(約550億円)。これにより、Broadcomが手掛けていたWi-Fi、Bluetooth、ZigBee関連の技術、IP(Intellectual Property)、製品が全てCypressに移管される。これらの製品の開発ロードマップも継承するので、BroadcomのIoT事業で開発やマーケティングに携わっていた約450人が、Cypressに移る予定だ。さらに、同事業の年間売上高1億8900万米ドル(2015年4月〜2016年3月の数字)もCypressに加わる。
エコシステムを完成させる
日本サイプレスの社長である長谷川夕也氏は、今回の買収の背景について「IoT機器開発に必要な技術のエコシステムを完成させるため」と説明する。「Cypressは、プログラマブルSoC(System on Chip)『PSoC』やARMマイコン、DRAMを除くメモリ、パワーマネジメントICを含むペリフェラル製品群を持っている。当社はIoT機器に必要な技術を手に入れるために、戦略的に買収を行ってきた。今回、IoT機器に欠かせないワイヤレス接続機能を実現する技術を買収することで、IoT機器開発のためのエコシステムが完成する」(同氏)
Broadcomから移管される製品の中には、IoT機器開発向け製品群「WICED(Wireless Internet Connectivity for Embedded Devices:ウィキッド)」や、同社が「5G Wi-Fi」と呼んでいたIEEE 802.11ac対応製品も含まれる。WICEDは、Wi-FiおよびBluetoothモジュールと、ドライバーやライブラリーを含むSDK(ソフトウェア開発キット)をパッケージとして提供するもの。Cypressは、ロゴの色だけを「黒と赤(Broadcomのカラー)」から「黒と青(Cypressのカラー)」に変更し、ブランド名や製品コンセプトはそのまま踏襲する。
さらに、現在製造されている40nmプロセスのワイヤレス製品群と、既に開発が始まっている28nmプロセス品の開発も継続する予定だ。
車載分野に注力
長谷川氏は、IoT分野の中でも特にコネクテッドカーなど車載分野に注力すると説明する。「Broadcomのワイヤレス製品は、車載分野では優位性がなかったという声を聞く。一方でCypressは車載向けマイコンとメモリで高いシェアを持っている」(同氏)
今後は、ワイヤレス製品を、PSoCやARMマイコンを含め既存の製品と組み合わせたり、1チップに集積してワイヤレス接続を実現する製品なども開発していくという。
長谷川氏は、「Broadcomのワイヤレス製品群は、同市場において最高水準といわれているもの。それを入手できたことは大きい。年平均成長率17%で成長すると予測されるIoT市場に向けて、Cypressは今後も多大なる投資を行っていく」と強調した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- サイプレス、ブロードコムのIoT事業を買収へ
2016年2月にAvago TechnologiesによるBroadcom(ブロードコム)の買収が完了して誕生した新生Broadcom。一部の事業を売却するコスト削減策を実施するとしていたが、IoT(モノのインターネット)事業を手放すようだ。 - 年功序列廃した“機動力ある1000人体制”で挑む新生サイプレスの国内戦略
2015年3月にサイプレスとスパンションが合併し誕生した“新生サイプレス・セミコンダクタ”の日本法人(日本サイプレス)社長に旧スパンション日本営業部門担当副社長を務めた長谷川夕也氏が就任し、同年6月2日、会見を行った。 - 2015年 車載半導体シェアランキング、首位はNXP
2015年の車載半導体市場は、NXP Semiconductorsが約42億米ドルの売上高でトップに立った。2014年まで首位を維持してきたルネサス エレクトロニクスは、3位となった。 - クルマの厳しい要求仕様に応えるDRAMとフラッシュメモリ
今回は、自動車のエレクトロニクスシステム、具体的には、ADAS(先進運転支援システム)およびクラスタ・ダッシュボード、車載インフォテインメントで使われるメモリを解説する。さらに、これらのメモリの5年後のロードマップも見ていこう。